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> [!NOTE] 目次
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> [!NOTE] リスト掲載用文字列
- [準委任契約だからって、失敗の責任をユーザー企業に負わせるのはズルい](https://atmarkit.itmedia.co.jp/ait/articles/2509/01/news009.html)【@IT】(2025年09月01日)
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> [!NOTE] この記事の要約(箇条書き)
- 準委任契約でアジャイル開発が進められていたITプロジェクトが頓挫した事例。
- ユーザー企業はシステム未完成を理由に開発費用の支払いを拒否。ベンダーは準委任契約のため成果物完成義務がないと反論。
- 東京地方裁判所は、ベンダーに対し「善管注意義務」があると判決。
- 準委任契約下でも、ベンダーは専門家として以下の義務を負うとされた。
- 必要な作業内容・期間・人員の把握
- 適切な工程の発注者への提示
- 発注者の仕様が不十分な場合、仕様確定の期限設定などの具体的方策を講じること
- 結論として、準委任契約は単なる「人貸し」ではなく、専門家としての高いスキルレベルと注意義務が求められる。
> [!NOTE] 要約おわり
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## 準委任契約だからって、失敗の責任をユーザー企業に負わせるのはズルい:「訴えてやる!」の前に読む IT訴訟 徹底解説(125)(1/2 ページ)
準委任契約で進めていたアジャイル開発プロジェクトが頓挫した。ユーザー企業は、システムの未完成を理由に開発費用の支払いを拒み、ベンダーは、準委任契約なので成果物の完成義務は負わないと反論した。裁判所はどちらの言い分を認めたのか――。
2025年09月01日 05時00分 公開
\[, @IT\]
[](https://atmarkit.itmedia.co.jp/ait/kw/itsosyo.html)
[連載目次](https://atmarkit.itmedia.co.jp/ait/kw/itsosyo.html)
筆者は普段、政府機関で働いている。役所というところは当然ながら、システムの開発においても事前に期待効果や実現する機能などをできる限り明確にしなければならない。故に、開発中に機能や要件が変化する可能性があるアジャイル開発は役所の予算制度との相性が悪いところがあり、なかなかアジャイル開発を見ることができなかった。
だがそんな役所でさえ、アジャイルによるシステム開発が徐々に見られるようになってきた。役所がアジャイル開発に興味を持つようになってきたのは、アジャイル開発の方が、よりユーザーの要望に近いシステムが作れそうだという認識が世間一般に定着してきたことによるのかもしれない。
アジャイル開発と相性の良い契約型と言えば、請負契約よりも準委任契約ということになるだろう。
詳しい説明は省くが簡単にいえば、請負契約が「成果物の完成を約束する」ものであるのに対し、準委任契約は「発注者の指揮命令の下、受注者が作業を行う」方式である。極論すれば、請負契約であれば、受注者の誰がどんな作業をしていようと成果物が期限通りに収められれば債務は履行したことになるのに対し、準委任契約は作業に必要な人員や体制を受注者が準備し、発注者が作業を依頼する形式である。
当然、作業の内容や作業品質、場合によっては作業時間なども発注者の命令に従うことになる(ただし、発注者が受注者の各メンバーを直接監督したり、作業指示を出したりすることはできない。発注者はあくまで受注者のリーダーに対してのみこれらを行える点が、派遣契約とは異なる)。
## 準委任契約におけるベンダーの責任とは?
アジャイル開発が徐々に増えていけば、それにつれて準委任契約も増えていくであろうことは想像に難くない。ここで問題になるのは、準委任契約において、ベンダーはどのような責任を負うのかという点である。
前述した通り、準委任契約は成果物の完成を債務とはしない。最終的にシステムが完成しなくても費用を払ってもらえることが多いわけだが、ベンダーは人さえ出していれば債務を履行したことになるのであろうか。それ以外にベンダーには責任を負うべきことはないのか――。
今回はそのあたりが問題となった訴訟を見てみたい。
### 東京地方裁判所 令和2年9月24日 判決より
ある開発ベンダーは、ユーザー企業からの委託に基づき、イベント管理システムの開発をアジャイル型で行った。契約型は準委任であり、開発ベンダーは成果物の完成に責任を負わないことが契約書に明記されていた。
しかしながら開発は遅延し、完成のめどが立たないと判断したユーザー企業は契約を解除し、システムの未完成を理由に開発費用の支払いも拒んだが、開発ベンダーは契約上、成果物の完成義務は負っていないとして費用の支払いを求めて訴訟を提起した。
公刊物未掲載 事件番号 平成28年(ワ)29834号
準委任契約では、ユーザー企業が作業を指示する。より広く考えれば、プロジェクト管理の責任はユーザー企業側にあるのであり、ベンダーは人を出して作業させればプロジェクトが失敗しても責任はない。確かにそれは準委任契約の考え方を踏襲した主張にも思える。
ただ、現実にはそうきれいに責任分担ができるわけでもない。なぜならば、ユーザー企業はシステム開発について素人であり、ベンダーの作業を事細かに指示したり、その妥当性を確認したりする知識を十分に持っていない。
[裁判所の判断は?](https://atmarkit.itmedia.co.jp/ait/articles/2509/01/news009_2.html)
[PAGE 2](https://atmarkit.itmedia.co.jp/ait/articles/2509/01/news009_2.html)
## ピンチのときに問題は顕在化する
「このクラウドのセットアップにはどれぐらいの時間がかかるのか」「このプログラムの開発の難易度はどれくらいか」――システム開発プロジェクトにおいて適切な要員を配置し、必要な期間を見積もるにはこれらを判断できなければならないが、そうしたスキルを持つユーザー企業は少数であり、実際はベンダーにさまざまな助言をもらいながらプロジェクトの計画を立て、管理していく。プロジェクト管理だけでなく、システムに組み込むソフトウェアやサービスを選定する際や、その他の実現方式を検討する際にも同じ情報の非対称性が発生する。
ベンダーとユーザー企業が仲良くプロジェクトを推進している間はこれらも自然と行われるが、何らかの原因でベンダーが作業に逃げ腰になったとき、あるいは本件のように裁判にまでなってしまったときには、こうしたベンダーの「協力」が、「単なる親切」であるのか、「契約法上の義務」であるかが問題となる。
本件のようにプロジェクトが失敗した際、その損害をどちらが賠償するかにも影響するし、それ以前に、準委任契約によるプロジェクト成功のためには、ベンダーとユーザー企業がどのような責任を負うのか、言い換えれば、どこまでやれば「お金をもらえる仕事をしたとなるのか」を認識しておくことは、非常に重要であろう。
裁判所では、どのように判断したのだろうか。
### 東京地方裁判所 令和2年9月24日 判決より(つづき)
開発ベンダーは、ユーザー企業(中略)から指示を受けた業務を実施する義務にとどまらず、本件契約上の善管注意義務として、本件システムの開発において必要となる作業上の内容、ならびにその作業に必要となる期間、および人員を把握し、適切な工程を示す義務を負っており、相手方から示された仕様の内容が十分でなく、適切な工程を示すことが困難である場合には、仕様を確定する期限を定めるなどの具体的方策を講ずる義務を負っていた。
## 準委任契約は単なる人貸しにあらず
確かに、準委任契約は成果物の完成を約束するものではない。システム開発であったとしてもその原則は変わらない。ただ、だからといって一定時間、発注者からの指示に基づいて働いてさえいれば債務を履行したことになるのかといえば、必ずしもそうではない。ここは実際の開発現場でもよく誤解されるところである。
本稿は法律の解釈について論じるものではないが、準委任契約は「単なる人貸し」ではなく、「専門家として期待されるスキルレベルが求められ、作業においてそれが十分に発揮されてこそ債務を履行したといえる」ことをベンダーもよく理解すべきだろう。本判決では、受注者の専門家としての責任を「善管注意義務」として以下を述べている。
### 準委任契約における、受注者の善管注意義務
- 必要となる作業内容を把握すること
- 作業に必要となる期間を把握すること
- 作業に必要な人員を把握すること
- 適切な工程を発注者に示すこと
- 必要に応じて発注者に仕様確定の期限を示すこと
私も開発の現場で「準委任だから、たとえシステムが完成しなくても費用はもらえる(払うべき)」という言葉を、受注者たるベンダーからも発注者たるユーザーからも聞くことがある。しかしそれは、あまりに短絡的な考えではあるまいか。
システム開発には相当の専門知識が必要であり、発注者が受注者にそれを期待するのは当然のこと(特に定めがなくても期待されること)である。上述した善管注意義務は、システム開発を生業(なりわい)とする会社であれば当然できなければいけないことであり、専門家としてこれらの義務を果たさなければならないことは、請負契約であっても準委任契約であっても変わりはない。
## 専門性の発揮は親切ではなく義務
たとえ準委任契約であってもベンダーには数多くの義務が課されることに十分に注意したい。
ユーザーの発注内容に基づいて、専門家として必要なスキルレベルを持つ人間を参加させること。それらのメンバーが各種の作業品質(生産性や作業期間、作業の正確性、求められる専門性など)を維持して作業することが保証されなければならない。これがシステム開発においてベンダーに課せられる善管注意義務であり、専門家責任であると考えてよかろう。
システム開発はユーザー企業とベンダーの協力によって成功するものであり、両者に情報の非対称性が存在する限り、ベンダーがこれらの責任を果たさなければならない。多くの開発現場でこうした役割分担がなされており、だからこそ多くのプロジェクトが成功するわけだが、問題は両者の信頼関係が崩れたときだ。
ベンダーがユーザー企業に嫌気が差して最小限の作業だけに絞り込みたいとき、あるいはプロジェクトが失敗してしまったとき、本来の責任はどちらにあるのか。そのときになって慌てないように、最初の契約段階、プロジェクト計画段階から、責任の分担をよく検討し、合意することが大切であるように思う。
## 細川義洋

ITプロセスコンサルタント。元・政府CIO補佐官、東京地方裁判所民事調停委員・IT専門委員、東京高等裁判所IT専門委員
NECソフト(現NECソリューションイノベータ)にて金融機関の勘定系システム開発など多くのITプロジェクトに携わる。その後、日本アイ・ビー・エムにて、システム開発・運用の品質向上を中心に、多くのITベンダーと発注者企業に対するプロセス改善とプロジェクトマネジメントのコンサルティング業務を担当。
独立後は、プロセス改善やIT紛争の防止に向けたコンサルティングを行う一方、ITトラブルが法的紛争となった事件の和解調停や裁判の補助を担当する。これまでかかわったプロジェクトは70以上。調停委員時代、トラブルを裁判に発展させず解決に導いた確率は9割を超える。システム開発に潜む地雷を知り尽くした「トラブル解決請負人」。
2016年より政府CIO補佐官に抜てきされ、政府系機関システムのアドバイザー業務に携わった
個人サイト: [CNI IT アドバイザリ](https://www.cniit-ad.com/)
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**1** | [2](https://atmarkit.itmedia.co.jp/ait/articles/2509/01/news009_2.html) [次のページへ](https://atmarkit.itmedia.co.jp/ait/articles/2509/01/news009_2.html)
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