# 15.(2011年)知の共有を目指して(国立国会図書館におけるデジタルアーカイブ構築)
「情報管理54(11), 715-724」(科学技術振興機構2012年2月)をベースに追加訂正。
[http://dx.doi.org/10.1241/johokanri.54.715](http://dx.doi.org/10.1241/johokanri.54.715)
## 目次
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## 1. 要約
本稿では、国立国会図書館(NDL)のデジタルアーカイブの構築の現状と、「知識の共有化」が目指す「新たな知識の創造と還流」に向けた活動の方向性について述べる。NDLは、納本図書館として、冊子体資料だけでなく、政府系インターネット情報等のデジタルコンテンツを含めて収集保存する責務を持っており、それらをいつでもどこでも利用できるようにすることが望ましい。NDLは、あらゆる資料や情報を可能な限り収集し保存し、NDLデジタルアーカイブを構築する。しかしながら全てを収集することは不可能であるので、他の機関と併せて網羅的な知識の蓄積を図り、分散デジタルアーカイブを構築する。それらNDLが収集できていないものも含めて、分散したデジタルアーカイブの情報を一元的にナビゲートし、かつ、意味的に関連付けて知識として利用できるようデータプロバイダの役割を果たすNDLSearchを構築する。このような既存の情報を知識として再利用して新たな知識の創造を可能にする知識インフラを構築する。
This article shows the current situation of construction of the National Diet Library(NDL)'s digital archive and the direction of activities for "creating and reproducing new knowledge" which "knowledge sharing" aims at. The NDL、 as a deposit library has a responsibility to acquire and preserve not only paper materials but also digital contents、 and needs to make them accessible anytime and anywhere. The NDL acquires and preserves digital contents to a maximum extent to build the NDL digital archive. However、 it is impossible to collect all of them、 so the NDL plans to accumulate all knowledge in cooperation with other institutions to build distributed digital archives. The NDL plays a data provider role to navigate all the distributed digital archival information and make it available as semantically-related knowledge to build "NDL Search". The NDL will make it possible to create new knowledge reusing the existing information as knowledge to build up the knowledge infrastructure.
## 2. キーワード
国立国会図書館、デジタルアーカイブ、知識インフラ、国立国会図書館サーチ、Next-L Enju、Hadoop、メタデータ、ダブリン・コア、Webサービス、セマンティックウェブ
National Diet Library、 digital archive、 knowledge infrastructure、 NDLSearch、 Next-L Enju、 Hadoop、 meta data、 Dublin Core、 Web service、 Semantic Web
## 3. はじめに
NDLは、日本の唯一の国立図書館であり、国の中央図書館として位置づけられている。
NDLは、納本制度の下で、国内の刊行物を網羅的に収集して提供する使命を持っているが、刊行物が、冊子体からデジタル情報資源にシフトしていく中で、すべての情報を収集することは不可能である。また、歴史的な刊行物は、必ずしも図書館にはなく、公文書館、博物館、図書館等で、分散所蔵している。
このような現実で、利用者はNDLが全ての図書を所蔵することを期待している。その期待に応えるためにも、民間データベース、大学・研究機関等が持つ学術情報、データベース、美術館・博物館・図書館・文書館の連携(MLA連携)、海外の図書館等とのサービス連携が必須な時代になっている。また、高度化する利用者ニーズに対応するためには、先進技術を活用して、サービスを提供する使命があり、そのためには、国や民間が持つ先進の技術の移転が必要となる。
NDLは、保存図書館として、情報資源を保存する立場での管理的指向から、利用者指向でサービスを提供する方向へ移行していかなければならない。
従来の国の機関の枠に捉われないサービスの提供に当たっては、効率的・効果的に実現するために、業務・システムの構築・運用も効率的に行われなければならない。
システムの開発に当たっても、サービスの提供に当たっても、機械的な作業は可能な限り省力化し、人は、より知的な活動へシフトしていく。そして、デジタル情報と情報技術の活用によって、より創造的な社会が築かれることを目指す。
## 4. NDLの役割
NDLは、「知識はわれらを豊かにする」というビジョン1)の中で、「日本の知的活動の所産を網羅的に収集し、国民の共有資源として保存する」「利用者が求める情報への迅速で的確なアクセスまたは案内をできるようにする」「来館者がどこにいても、来館者と同様のサービスが受けられるように努める」という柱を掲げている。
NDLの使命は、利用者が必要とする情報を確実に提供することであって、NDLが保有している情報だけを提供すればいいというものではない。NDLが保有している情報は利用しやすく、また、保有していない情報へは、所在場所へ確実に案内することが求められている。このような使命を果たすべく、資料のデジタル化及び情報の収集・保存そして提供を行うサービスを構築している。
## 5. 電子図書館構築のあゆみ
NDLは、1994年ころから電子図書館構築に向けた活動を行ってきている。1995年にはパイロット電子図書館プロジェクトでの実証実験を実施した。2002年、電子図書館サービスを中心的な機能とする関西館が開館し、本格的な電子図書館事業を開始した。以降、「近代デジタルライブラリー」の公開、インターネット資源の選択的収集事業(WARP)、データベースナビゲーション事業(Dnavi)、各種の電子展示会の開催など各種の新規サービスを公開・提供している。2007年に、全国の各種デジタル情報資源を一元的に検索し、ナビゲーションを可能とする国立国会図書館デジタルアーカイブポータル(PORTA)に着手するなど、日本全国のデジタル資源の連携を視野に入れたサービスを始め、館種を問わない全国の図書館との連携の強化と、図書館に限らず広く博物館や文書館などのデジタルの文化・歴史遺産をもつ機関との連携の強化を目指した。
2009年より、広範囲にデジタルコンテンツを収集、所蔵資料のデジタル化を行い、ウェブ情報の制度的収集も始まった。また、冊子体資料もデジタル情報も併せて網羅的に検索・案内する情報探索サービスとして、国立国会図書館サーチ(NDLSearch)の開発と提供を目指した。
## 6. 最新の取組み
NDLが新しい利用者サービスを実現するために取り組んでいることは、大きく2つある。1つ目は「業務・システム最適化の推進」であり、2つ目は「デジタル情報資源の収集・蓄積・利用の推進」である。従来型のシステムの機能強化・運用に係る膨大な人物金の資源を削減して、削減した資源で新たなサービスシステムを構築し提供するということである。
### 6.1. 業務・システム最適化の推進
NDLはサービスの改善を目指して、トータルな図書館システムと新しいサービスの実現に向けて活動している。2008年に「国立国会図書館業務・システム最適化計画」2)を策定し、利用者本位のサービスと効率的な業務遂行を可能とするよう、費用対効果の高い情報システムの実現に取り組んでいる。 また、情報システム資源の無駄を省き、利用者の利便性を高めるため、インタフェースやデータ構造の標準化、ハードウェア、ソフトウェア資源の共有化、さらには類似の機能やサービスを提供する情報システムの統廃合を進め、併せて業務の見直しを行うこととしている。サービスは、システムとそれを使った業務により実現するもので、情報システムは、サービスを効率的・効果的に実現するためのものと位置づけている。
情報システムは、サービスを効率的に遂行することを支援するもので、情報システムでできないことを、業務により人が行うものとしている。システムの構築に当たっては、個別サービスの最適化ではなく、国全体、NDL全体の最適化の観点で実施すべき要件を明確化し、他機関と連携分担して構築する。
#### (1) 業務基盤システムの構築
現行の電子図書館基盤システムの次期システムとして、本年1月にNDL所蔵資料の統合書誌データベースシステムとNDL-OPACの機能を担う業務基盤システムが運用を開始した。
現行の電子図書館基盤システムは、NDLの独自仕様で開発・運用しているもので、運用コストや、柔軟性と相互運用性の面で課題となっていた。次期システムではこれらの課題を解決するため、業務を見直して、図書館パッケージソフトを導入し、最低限の仕様変更や外付け開発を行った。
#### (2) デジタルアーカイブの構築
NDLのもう1つの基幹システムであるデジタルアーカイブシステムは、インターネット情報をサイト単位で収集・保存するシステムと、デジタルコンテンツを著作別で収集・保存するシステムと、大規模なファイルシステムを保有する電子書庫3つで構成される。NDLが個別データベースとして公開していた、貴重書データベース、近代デジタルライブラリー、児童書デジタルアーカイブを統合して、一元的に管理できるようにして、効率化を進めている。
#### (3) 情報探索サービス(NDLSearch)の提供
3つ目の新サービスである情報探索サービスシステムは、業務基盤システムの稼働に合わせて、本年1月に本格稼働した。PORTA、国立国会図書館総合目録ネットワーク(ゆにかねっと)を統合し、NDL-OPACを統合検索することにより、システムの最適化を図り、かつ、従来のOPACでは提供できていない次世代OPAC機能を実装して、利用者サービスの向上を図った。NDLSearchの概要は、後掲する。
### 6.2. デジタル情報資源の収集蓄積・利用の推進
NDLの現在の主な取組みの2つ目は、「デジタル情報資源の収集・蓄積・利用の推進」である。
#### (1) インターネット資料の制度的収集
2009年7月に国立国会図書館法と著作権法が改正され3)、国、地方公共団体、国立大学等の公的機関が発信するインターネット資料について、著作権者の許諾なく収集できるようになった。 この法改正に基づき、NDLは、2010年4月から、公的機関のウェブサイトの網羅的な収集を開始しました。
#### (2) 民間の「オンライン資料」の収集制度化
2010年6月に納本制度審議会から提出された答申4)では、電子書籍、電子雑誌など従来の図書、雑誌に相当し、ネットワーク上を流通する情報を「オンライン資料」と定義し、NDLが法的に収集できる仕組みを整備すべきとされた。この答申を受けて、現在、「オンライン資料」の収集に係る制度設計の検討を行っている。利用者が書籍に触れる機会が増えることによりニーズを喚起し、出版市場が拡大することにより、出版界が発展する枠組みを目指す。出版界、著作権者等の関係団体・機関との協議を経て、2012年以内には制度化を実現したいと考えている。
#### (3) 所蔵資料のデジタル化
2009年に著作権法が改正5)され、2010年1月に施行されたことに伴い、制度上重要な変更があった。
1つは、国立国会図書館においては原本保存のため、著作権法第31条第2項の規定により著作権者の許諾を得ないで所蔵資料をデジタル化することが認められたことである。2009年度補正予算で、NDL所蔵資料のデジタル化経費として約127億円が計上され、デジタル化作業を実施した。貴重書を含む古典籍資料約7万冊、和図書約90万冊(1968年以前刊行分)、和雑誌約114万冊(2000年受入分まで)、博士論文約14万冊(1991年度~2000年度受入分)を対象とした。デジタル化は、画像データのみだが、目次のあるものは目次のテキストデータを作成している。 デジタル化した資料の利用については、NDL内での提供が基本だが、和図書のうち、戦前期刊行のもの及び博士論文は、著作権処理を行った上で、インターネットで提供している。
改正著作権法に基づきデジタル化した資料の原本は、利用に供さないことが条件のため、従来行っている公共図書館等への図書館間貸出ができないことになる。現在、デジタルデータを用いた代替案について、出版社、著作権者の関係団体等と協議している。
2つ目は、障害者の情報利用の機会確保のため、国立国会図書館、公共図書館、大学図書館、学校図書館等において、著作権者の許諾を得ないでテキストデータ、拡大図書などを作成し、障害者に提供できるようになったことである。関係機関等から障害者サービスにデジタル化資料を活用することが求められている。方法としては、作成した画像データからOCR等により全文テキストデータを作成のうえ、NDLの館内、他の公共図書館もしくは障害者の使用する専用端末に配信し、読み上げソフト等を用いて提供する方式が想定される。
#### (4) 障害者向け及び本文検索のためのテキスト化
また、2011年4月に、出版関係者や有識者でつくる文化庁の「電子書籍の利用と流通の円滑化に関する検討会議」6)は、NDLがデジタル化した蔵書のうち、市場で入手困難な出版物について、全国の公立図書館や大学図書館などに画像データを配信し、閲覧できる仕組みを整備すべきであるとしている。 また、さらなる利用者の利便性の向上を図るために、本文検索サービスの提供が必要であり、検索サービスとして利用するためのテキスト化であれば、権利者の利益を不当に害さないとの中間報告がなされた。
本文テキスト化に当たっては、視覚障害者向けの読上げに対応すること、本文の記述部分の章・節・項単位で的確に検索できるようにするために全文インデックスが作れること、さらに、電子出版社等が、DRM等を施して著作者の権利を保護した形で電子書籍ビューア等で閲覧できるようにすることが必要である。
視覚障害者向けのドキュメントフォーマットとして、DAISY4に準拠し、テキスト部分に関してはEPUB3.0の仕様に従った日本語書籍基本テンプレート(JBasic)7)というマークアップ指針も策定が進んでいる。
論文等に関しては、科学技術振興機構(JST)が運営する科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)8)で、論文データを多言語対応の論文用XML DTDを適用することになっている。
閲覧用コンテンツに関しては、縦長の冊子体形式を、そのまま閲覧できるタブレット端末の普及が見込まれる状況で、PC、スマートフォン、タブレット端末等で快適に検索・閲覧できる仕様への対応を進めている。
## 7. NDL Search
NDLSearchは、NDLが利用者とコンテンツを結ぶ基本動線であり、本年1月から正式に稼働した。
### 7.1. NDL Searchが当面目指す方向性
NDL Searchは、国内の各機関が持つ豊富な「知」を活用するためのアクセスポイントとなることを目指した検索サービスである。「国立国会図書館が保有しているか否かを問わず、冊子体に加えて、デジタル化された画像、テキスト、音声等の様々な形態の情報を、いつでも、どこでも、利用者が求める形で、迅速かつ的確に、アクセス又は案内できるようにすること」を目的としている。
書誌情報だけでなく、資料の全文も検索の対象とするなど、より掘り下げた検索を可能としている。最終的には、利用者が必要とする事実や情報・知識そのものを検索できるようにすることを目指している。
### 7.2. NDLSearchのサービスイメージ
NDLSearch は、以下のようなサービスを実現する。9)
#### (1) 所蔵機関、情報種別を問わない統合検索機能の提供
所蔵機関、情報種別を問わず、データベースを統合検索(書誌、目次及び全文テキストからの検索)し、同一著作物、同一資料をグルーピング表示する。また、日中韓の国立図書館の統合検索(翻訳検索・翻訳表示)できるようにする。
#### (2) コンテンツの閲覧及びナビゲーションを容易にする機能の提供
情報の入手手段へナビゲーション(デジタルコンテンツ、所蔵機関、オンライン書店、近くの図書館へ案内)する。また、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末等、閲覧デバイスに最適化したユーザインタフェースを提供する。
#### (3) ユーザビリティを向上させた検索機能の提供
あいまい検索(表記ゆれ、キーワードサジェスト)、絞り込み検索(ファセット検索)及び再検索機能(連想キーワード検索、シソーラス検索、キーワードレコメンド)を可能にする。
#### (4) 情報及びサービスの再利用のための機能の提供
納本された新着資料の書誌情報の早期提供(MARC及びDCメタデータ形式)し、また、検索結果のRSS情報の提供、ブックマーク機能、Twitter、本棚サイトへの投稿も容易に行えるようにする。
#### (5) 他機関サービス向けのAPIの提供
他機関のシステムが、このサービスをデータプロバイダとして利用するために、国際標準等として普及しているハーベスト及び横断検索用の各種APIによる連携機能を実装している。
### 7.3. システム構成
NDLSearchは、オープンソースソフトウェア(OSS)や外部のウェブサービスを積極的に活用して、開発することを基本方針としている。ベースとなるシステムには、日本で開発されたオープンソースの統合図書館システムであるNext-L Enjuを採用し、そのほか、ウェブの収集ロボットであるHeritrix、分散ファイルシステムであるHadoop、連想検索エンジンであるGETAssoc、CMSであるWordPressといったOSSを活用してシステムを構築している。開発したソフトウェアも、将来的にはOSSとして公開し、公共図書館等での利用に供することを想定している。
## 8. 知識インフラの構築
NDLSearch、NDLデジタルアーカイブの発展形として、今後取り組もうとしている計画は、「知識インフラの構築」である。
### 8.1. 経緯
国の総合科学技術会議が決定した「第4期科学技術基本計画」(2011年8月19日閣議決定)10)においては、研究情報基盤の整備を推進することとし、推進方策が示された。また、NDLでは、これに先立ち、「国立国会図書館における今後の科学技術情報整備の基本方針に関する提言」(第52回科学技術関係資料整備審議会(2011年1月19日))を受けて「第三期科学技術情報整備基本計画」11)を定め、「知識インフラ」の構築を進めることとした。
### 8.2. 知識インフラとは
知識インフラとは、情報資源を統合して検索、抽出することが可能な基盤で、国内の各機関が保有する情報を知識として集約し、新たな知識の創造を促進させるもの。その知識をさらに集積・流通・活用と創造するサイクルの構築が必要である。
新たな知識の創造のためには、分野を越えた知識の関連付けが必要であり、日本中に散在するコンテンツの所在を集中管理し、そこに検索をかければ、関連する全ての必要なコンテンツが得られるようにする。知識は関連するものが有機的に結合され、ネットワーク的に統合化されたものであり、単に情報を集めたものではない。日本中にある芸術を含んだあらゆる学問・研究のコンテンツ、研究ツール、社会状況データ等が知識の形に組織化され、これらの知識・情報が公開され、全ての人が共有できることが大切である12)。
*所在場所、媒体形式を意識にした「書籍、文献単位の提供」から、所在場所、媒体形式を問わず、「情報・知識・物語の単位での提供」へ。
*メタデータの収集、探索、提供ではなく、情報の内容で、情報を関連付けし、提供する。
*人間頭脳の持つ知識とその活用の機能にできるだけ近いサービスの提供。
*ユーザの意図した情報がより的確に取り出せる「知識検索サービス」。
*より安心して利用できる検索システム。キーワード、曖昧検索を駆使した「情報探索」から、信頼性を評価した「事実検索」へ。
### 8.3. 知識の集約と提供のための連携イメージ
情報を集約し提供するシステムとして、図1のように、NDLSearchを核として想定している。まず、情報を集約し、それを提供する。利用者に求められるサービスと機能を持ったシステムを構築し提供するためには、外部の機関との連携協力が必須であり、NDLは積極的に連携協力を行っていく。その連携の姿勢として、次のような方針を掲げている。
#### (1) メタデータの収集または横断検索等による統合検索サービスの提供
外部機関・サービスが提供するコンテンツのメタデータを当該機関・サービスの許諾を得て収集、もしくは横断検索する。実施に当たっては、共通的なメタデータ仕様、メタデータ交換プロトコルの実装が必要であり、また、個々のコンテンツに永続的識別子が付与されることが重要である。
メタデータに関しては、NDLは図書・雑誌についてMARC21、冊子体とデジタル化資料の検索のために必要な記述規則として、ダブリンコア(Dublin Core: DC)をベースに拡張したメタデータとしてDC-NDL(国立国会図書館ダブリンコア記述規則)を定義している。
永続的識別子については、冊子体資料では、図書にはISBNが付与され、NDLに納本された刊行物には独自の書誌IDが、さらに国内刊行物には全国書誌番号(JP番号)が付与されている。学術・科学技術分野において、JSTが、ジャパンリンクセンター(JaLC)を設置し、DOIをベースにした永続的識別子を付与し、論文等へのリンクを保証するサービスを準備している13)。出版界でも書籍と電子書籍を関連付ける識別子の検討が進められている。これらを統合的に関連付けるサービスの提供を目指す。
#### (2) 外部のウェブサービスとの連携によるサービスの提供(マッシュアップサービス)
外部で提供されている連想検索サービスや機械翻訳サービス等のウェブサービスを有機的に組み合わせて、付加価値の高い検索サービスを実現する。また、外部の情報サービスへの効果的なナビゲーションを実現することにより、利用者の情報探索を支援する。実施に当たっては、各サービスが、単なるメタデータ交換ではなく、ウェブサービスの連携に必要な共通的なAPIを持ち、必要に応じて自由に組み合わせられるようにプロトコルの共通化を図っていく。
#### (3) )研究開発、技術開発における連携
利便性の高いシステム構築は、現状で確立した技術のみでは実現が困難である。大学の研究室、官民の研究機関、ベンチャー企業等による各種の情報技術に係る研究開発を支援するために、NDLの情報資源を利用した実用化・実証実験を行うことができるよう、実験用プラットフォームを提供する。
#### (4) コンテンツの統合利用促進のための環境整備
有用なコンテンツを保有しているにもかかわらず、データベースの構築や検索サービスの提供ができない機関に対して、データベースの構築やAPI実装を支援する。大学等においては、機関リポジトリの構築が進んでいるが、公共図書館、出版社等では、デジタル化及びデータベース化の実施が先進的な組織に留まっている。NDLは、標準的な仕様を実装したアーカイブシステム、検索・閲覧システムをOSSとして提供し、各期間でのデジタルアーカイブの構築を支援していく。
### 8.4. 次世代システム開発研究の概要
NDLは、次世代技術の研究開発成果を活用して、これまでの単なる「情報検索」から、事実としての「知識検索」へ進化させ、知識の再利用による新たな知識の創造に寄与することを目指す。図2のようなアプローチを想定している。
これを実現するために、NDLラボの設置を想定している。
### 8.5. NDLラボの設置
NDLラボは、次世代サービスの研究開発と実用化を促進するために、実用化実証実験の場と成果の利用のための研究者が集える場を想定している。概念としては、図3のように、NDLが保有しているコンテンツ、システムを研究者に提供する。研究者は、それらの資源を活用して実用化システムを開発する。その成果を、NDLのシステムに実装して次世代のサービスを提供する。このスキームで2010年度に、情報探索サービスシステムの環境をテストベッドとして利用して、全文テキスト化実証実験を行った。
## 9. 震災アーカイブの構築
2011年3月11日の東日本大震災で、日本は未曾有の被害を受けた。その復興のために「復興への提言」(災害の記録と伝承)が示され、関係する記録、資料等の収集・保存を行い、一元的なアクセスが可能な仕組みとして、東日本大震災アーカイブ(仮称)の構築を進めるとされた。「第4期科学技術基本計画」の基本認識と理念の中でも「震災からの復興、再生の実現」が示され、2011年度三次補正予算で震災アーカイブを具体的に構築することとなった。
東日本大震災に関する記録、資料等は多種多様である。震災時の状況、被害の実態、復旧・復興の状況、支援の記録などを将来に残していく必要がある。
これらを1つの機関が収集することは困難であり、関係府省の各機関が分担して収集・保存を行い、各機関に保存された記録、資料等に対して一元的なアクセスと永続的な保存を保障するための「震災アーカイブポータル」の構築と提供を目指す。
### 9.1. 震災アーカイブの構築に当たって
NDLでは、知識インフラの構築の一環として、震災アーカイブ及び震災アーカイブポータルを構築することとした。構築に当たっては、効率的、効果的に進められるように、次世代技術の研究成果を積極的に活用する。
### 9.2. 震災に関する知識インフラの構築
アーカイブでは、クローラによる収集のみならず各機関が収集したアーカイブを将来的には長期保存のために一括して受け取る仕組みを構築する。また、画像・映像なども的確に検索ができるように、明確なメタデータが付与されていない情報にも可能な限りメタデータを自動付与する仕組み、本文も含めたテキストの全文インデキシング等を行う。さらに、今後、復興の記録なども含めていくことを想定して、ストレージ容量や大量の情報の組織化のための処理能力も必要に応じて増強できる仕組みを構築する。また、震災アーカイブ自身が、災害で消失してしまわないように、ディザスタリカバリも考慮する必要がある。それらの要件を満たすシステムとして、必要に応じて、処理能力、ストレージ容量が段階的に増やせる、PaaS(Platform as a service)、分散処理サーバ、分散ファイルシステムの導入を検討している。
このようなシステムを構築するためには、知識インフラの構築で目指す「次世代技術の研究開発成果の活用」のスキームで行うこと有効と考え、それによって、図4に示す「新たな知識の創造と還流」により、「震災に関連する知識のインフラ」の構築を目指したいと考えている。
## 10. 電子情報関連の組織再編
NDLでは、以上のような次世代に向けた電子情報に関する事業を効率的、効果的に実施するために、2011年10月に電子情報部を設置した。15)
設立趣旨は、NDL全体の電子情報、情報システムの企画立案が効率的に行えるようにして、統合的に情報システム基盤の構築・運用を図る。分散して行っていたシステム関連業務を一元的に行い、現行システム・サービスを効率的に再構築・運用する。将来的な展望を持って、トータルな図書館システムを実現し、図書館の枠を超えて利用者サービスを向上させる。
2012月1月の業務・システムのリニューアルの次の目標は、知識インフラの構築であり、国立図書館として、知識情報資源のアーカイブ基盤の構築やデジタルコンテンツの利用促進等の情報流通基盤の整備を推進し、次世代の図書館サービスを提供することである。
これらの実現に向けて、先進サービス動向、技術を把握してサービス要件、システム化要件を取りまとめ、構築・運用するために高いマネジメント能力を持った人材育成・確保を進める。それに伴い、外部の有識者の実践的な助言・提案をいただくために、有識者が集まれる場として、前掲のNDLラボの運営を想定している。そこでのテーマは多岐にわたる。たとえば、技術要素では、パターンマッチング、パターン認識、マルチメディア技術、画像、映像処理技術、クラスタリング、キーワード抽出、シソーラス、テキストマイニング、関連性検出、文章解析、対話システム、情報圧縮・要約技術、情報分析技術、機械翻訳技術等がある。
## 11. おわりに
利用者が情報を知識として活用するための情報探索を行う目的は、問題・課題の解決であり、回答が掲載された資料の所在ではなく、回答そのものを知識・情報として得ることである。今後は、従来の単なる情報としての検索でなく、事実としての知識検索へ進化させ、知識の再利用による新たな知識の創造が求められている。それを実現するための前提として、資料をデジタル化し、インターネット上に内容を可視化することが必要。加えて、個別の情報に意味的にタグ付けし、知識として相互に関連付けて、利用者が求める知識として、より的確に取り出せるようにすることが必要である。「可視化」においては、自動翻訳等により言語差異を吸収し、また、交換される情報に付与されたメタデータの記述要素、記述規則を共通化し、用語の類義語を把握するシソーラス、語彙の違いを吸収するオントロジー等の言語や表現の差異を吸収する仕組みが出来上がれば、言語、業種、業態の壁を超えて、網羅的な情報資源の中からより的確な情報を取り出すことができる。
NDLは、各国の国立図書館と協力して、世界レベルでの電子図書館構想の一翼を担い、国内外の関係機関と連携して、知の共有と提供の基盤を構築することを目指す。
## 12. 参考文献
1)国立国会図書館. "国立国会図書館60周年を迎えるに当たってのビジョン(長尾ビジョン)". 国立国会図書館. http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/vision_60th.html、 (accessed 2011-11-07).
2)国立国会図書館. "国立国会図書館業務・システム最適化計画". 国立国会図書館. http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/pdf/optimization.pdf、 (accessed 2011-11-07).
3)国立国会図書館. "改正国立国会図書館法によるインターネット資料の収集について". 国立国会図書館. http://www.ndl.go.jp/jp/library/news/1188809_1484.html、 (accessed 2011-11-11).
4)国立国会図書館. "納本制度審議会答申「オンライン資料の収集に関する制度の在り方について」について". 国立国会図書館. http://www.ndl.go.jp/jp/news/fy2010/1189274_1531.html、 (accessed 2011-11-19).
5)文化庁. "平成21年通常国会 著作権法改正等について". 文化庁. http://www.bunka.go.jp/chosakuken/21_houkaisei.html、 (accessed 2011-11-11).
6)文化庁. "電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議". 文化庁. http://www.bunka.go.jp/bunkashingikai/kondankaitou/denshishoseki/index.html、 (accessed 2011-11-19).
7)電子出版環境整備事業. "JBasicもうすぐ08". 電子出版環境整備事業. http://www.epubcafe.jp/jbasic、 (accessed 2011-11-19).
8)科学技術振興機構. "J-STAGE次期バージョン(J-STAGE3)開発について". J-STAGE(科学技術情報発信・流通総合システム). http://info.jstage.jst.go.jp/society/development/index.html、 (accessed 2011-11-11).
9)国立国会図書館. "機能概要 ≪ 国立国会図書館サーチについて". 国立国会図書館サーチ. http://iss.ndl.go.jp/information/function/、 (accessed 2011-11-30).
10)内閣府 科学技術政策・イノベーション担当. "第4期科学技術基本計画(平成23年8月19日 閣議決定)". 内閣府. http://www8.cao.go.jp/cstp/kihonkeikaku/4honbun.pdf、 (accessed 2011-11-11).
11)国立国会図書館. "第三期科学技術情報整備基本計画". 国立国会図書館. http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/pdf/basic_plan03.pdf、 (accessed 2011-11-11).
12)長尾真. "新しい時代の情報図書館学へ向けて(九州大学創立百周年記念講演)". 九州大学. https://qir.kyushu-u.ac.jp/dspace/bitstream/2324/19701/1/20110611.pdf、 (accessed 2011-11-11).
13)科学技術振興機構. ジャパンリンクセンターの開発について. J-STAGEニュース. 2011、 no. 28. http://www.jstage.jst.go.jp/jnews/J-STAGE_NEWS_NO28.pdf、 (accessed 2011-11-11).
14)内閣官房 東日本大震災復興構想会議. 復興への提言~悲惨のなかの希望~. 2011-06-25、 第12回東日本大震災復興構想会議. 57p. http://www.cas.go.jp/jp/fukkou/pdf/kousou12/teigen.pdf (accessed 2011-11-11).
15)国立国会図書館. 国立国会図書館月報. 2011、 no. 607. http://www.ndl.go.jp/jp/publication/geppo/pdf/geppo1110.pdf、 (accessed 2011-11-11).