# 18.(2012年)国立国会図書館が取り組むデジタルデータの保存と未来のデータ保存 **ハミングヘッズ取材対応** 平成24年8月7日 電子情報部 中山 ## 目次 ```table-of-contents title: minLevel: 0 maxLevel: 0 includeLinks: true ``` ## 1. 企画内容 - 『HH News & Reports』 - 『Monthly Interview』の9 月企画 - 参考:「国立国会図書館の蔵書電子化と未来の図書館の姿」 - [http://www.hummingheads.co.jp/reports/interview/n0101206/interview51_01.html](http://www.hummingheads.co.jp/reports/interview/n0101206/interview51_01.html) - **「国立国会図書館が取り組むデジタルデータの保存と未来のデータ保存」(仮)** クラウドなどでデータの保存が消失する事件がおき、改めて「データの保存」が注目されている。その意義を再確認しつつ、国立国会図書館の取り組んでいるデジタルデータをはじめとした資料の保存の取り組みについて紹介。今後の展望についても話をうかがう ## 2. 事前質問 - クラウドなどでデータの保存が消失する事件がおき、改めて「データの保存」が注目されています。「データを保存すること」の重要性についてお考えをお聞かせいただければと思います。 - 国会図書館が現在取り組んでいる資料の保存、デジタルデータの保存の取り組みについてお聞かせ願えればと思います。また以前の取り組みをどのように発展させていくかについてお考えをお聞かせください。 - 海外の図書館における資料保存・デジタルデータ保存についてはどういう面を参考にしたいとお考えでしょうか。 - 現在のデジタルデータの保存技術への要望を実際に資料保存の現場にいるお立場からお聞かせ願えればと思います - 注目されているデジタルデータの保存技術があればお聞かせください。 - 今後の国会図書館の資料保存、デジタルデータの保存の展望をお聞かせください。 ## 3. 回答概要 - 電子図書館課がこれまで取り組んきた、電子情報の長期的な保存と利用 - [http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/preservation.html](http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/preservation.html) - 個別 - 短期的なデータの機密性・完全性・可用性の確保(たとえばe-文書法)、長期保存の必要性 - 情報資源を後世に残すことの意義、現状の長期保存のための取組み、ウェブアーカイブ、デジタルデポジット、制度的収集、保存のためのデジタル化 - DRAMBORAの意義、オランダ王立図書館e-Deposit、IA社、JIIMAでの取組み。。。 - ④⑤長期保存メディア、長期保存システム、必要に応じて順次拡張できるストレージ技術、分散ファイルシステム、ディザスタリカバリ技術、クラウドコンピューティングとか、膨大な情報を検索・閲覧できるようにする技術にも触れていいかも - ⑥当館は、今後増え続けるデジタルコンテンツをどのようにして、後世に残し、将来的なアクセスを保障していくか ## 4. 回答 ### 4.1. クラウドなどでデータの保存が消失する事件がおき、改めて「データの保存」が注目されています。「データを保存すること」の重要性についてお考えをお聞かせいただければと思います。 - 「私たちの使命・目標2012-2016」 - 国立国会図書館は、出版物を中心に国内外の資料・情報を広く収集し、保存して、知識・文化の基盤となり、国会の立法活動を補佐するとともに、行政・司法及び国民に図書館サービスを提供することを通じ、国民の創造的な活動に貢献し、民主主義の発展に寄与することを使命としている。 - 確実な保存 - 電子情報も従来の紙資料と同じく、国の知識・文化の基盤となる資料であり、当館の使命を果たすためにも、データを失うことはあってはならない。 - クラウドでのデータ消失に関して - ただ、例の件を「クラウド」という言葉で一般化するのは、やや正確さを欠くようにも思う。 - 分散保存が必要 - 東日本大震災では、バックアップデータを同じ施設内に置いておくだけでは、データの安全を確保するには足りないということが広く認識された。 - その意味で、クラウドの重要性は今後むしろ高まるのではないか。 - データを有効活用 - 同時に、震災時の対応やその後の復興に向けての検討においても、データを有効活用することが、社会にとっていかに重要かということも再認識されている。 - 図書館にとって、電子情報が知識・文化の基盤であることはもちろんだが、広く電子データ一般として社会の基盤となっているということもできるだろう。 - データを保存することは、社会の基礎・基盤を守る活動の一部だと考えている。 ### 4.2. 国会図書館が現在取り組んでいる資料の保存、デジタルデータの保存の取り組みについてお聞かせ願えればと思います。また以前の取り組みをどのように発展させていくかについてお考えをお聞かせください。 - デジタルコンテンツの保存の取組み - 電子資料の保存については、NDLデジタルアーカイブシステムの構築に取り組んできた。当館所蔵資料のデジタル化、インターネット資料(ウェブサイト)の収集を行ってきた。 - また、今年からは東日本大震災アーカイブ(仮称)の構築にも着手している。来年7月からは、国立国会図書館法の改正により、オンライン資料の収集も可能となる。 - デジタルデータの保存には、媒体やストレージなどの「物理保存」の取り組みと、記録されたデータの内容を人が理解できる形式で再生できるように維持する「論理保存」の取り組み2つの保存への取り組みが必要である。 - 当館ではまだ、論理保存の取り組みを本格的には行えていないが、平成18年度から5カ年をかけて調査を行った。詳しくは、 - 電子情報の長期利用保証に関する調査研究 - http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/preservation_02.html - の下にある各報告書を見てもらいたい。 - 紙資料などの保存の取組み - 電子に限らない、紙資料などの資料保存一般としても、当館は、国際図書館連盟(IFLA)の資料保存コア活動(PAC: Core Activity on Preservation and Conservation)のアジア地域センター([http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/iflapac.html](http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/iflapac.html))を担うなど、様々な活動に取り組んでいる。 - 詳細については、担当部署に聞いていただいた方がよいだろう。 - 今までの取り組みに関しては、 - 例えば、2009年度補正予算で行った当館所蔵資料のデジタル化では約200万冊以上の資料がデジタル化されたが、著作権処理が終わっていないものは、当館内でしか利用できない。 - しかし、2012年6月に著作権法が改正され(6月15日衆議院で修正可決、6月20日参議院で可決(第180回国会)。6月27日付公布。平成25年1月1日施行。)、来年1月以降、絶版に相当する資料については国立国会図書館から公共図書館、大学図書館等への送信が可能となる。 - 現在、具体的な送信方法について関係者と協議しつつ検討を行っている所である。 - また、資料のデジタル化については、財政は厳しいが、今後も、必要な予算を確保し、電子化を進めていきたい。 - 情報技術を活用して社会全体の知的活動の基盤を構築し、日本における知的活動をさらに活発にすることの重要性を常に指摘されていた。(いわゆる知識インフラの構築) - 国立国会図書館だけで実現できることではないが、様々な関係機関と協力・連携しながら、日本の知的活動を支える仕組みを、今後も充実させていきたい。 ### 4.3. 海外の図書館における資料保存・デジタルデータ保存についてはどういう面を参考にしたいとお考えでしょうか。 - 海外では、とくに欧米で、デジタルデータの保存について盛んに研究がおこなわれている。 - とくに日本ではあまり行われていない、論理保存の取り組みが盛んである。 - 今後、電子書籍が普及すれば、フォーマットの問題など、論理保存がきちんとできなれば、将来、その電子書籍を利用することができなくなってしまう。当館も、今後、論理保存の取り組みを強化していきたい。 - さらに、海外ではDRAMBORA[[18.(2012年)国立国会図書館が取り組むデジタルデータの保存と未来のデータ保存]]のような、デジタルデータ保存のリスク評価を行う活動や、LIFE[[18.(2012年)国立国会図書館が取り組むデジタルデータの保存と未来のデータ保存]]などのデジタルデータの保存コストに着目した研究も行われている。これらについても、参考としたい。 - 海外では、技術的な側面だけではなく、保存するための活動を行う機関・組織の政策や、機関・組織自体の長期的な安定性についても、議論が進められていると聞いている。 - 紙の本であれば、たまたま倉庫の隅に残っていた、というものでも、読むことができるが、8インチのフロッピーディスクが発見されても、機器やソフトウェアが維持されていなければ、読めるわけではない。 - 保存には継続的な取り組みが必要であり、関係する機関・組織が果たす役割は大きい。 - その一方で、個人や家族の記録がデジタルに移行している状況を反映して、私的なデータ保存活動に関する啓蒙などに取り組んでいる例もあるようだ。 - 様々な点で、海外の事例に学ぶべき点はまだまだ多いと考えている。 ### 4.4. 現在のデジタルデータの保存技術への要望を実際に資料保存の現場にいるお立場からお聞かせ願えればと思います。 - ストレージについては、当館がデジタルアーカイブの構築に取り組み始めた以降も随分安くなった。しかし、運用費用も含めるとまだまだ安いとは言えない。 - かといって、クラウドでのデータ消失事故のようなことはあってはならない。 - データを消失しないことを前提としながらも、運用コストを含めた妥当なコストでデータを保存する技術の確立を望みたい。 - ビット列の保存のための物理保存については、 - 今のところ、長期に安定して保存できるメディアによる解決と、HDDのようにある程度壊れることを前提としつつ、モニタリングと適宜の交換等の運用で解決する方策が考えられるが、どちらも適材適所で使えるよう、さらに発展していくことを期待している。 - 再生可能にしておくための論理保存については、 - ファイルフォーマットを標準化し、技術仕様の入手を容易にすることで、再生のための技術を維持する方法などがある。 - エミュレーションという方法もありうるが、知的財産権の問題を解決しなければ、過去のOSですら正規には入手困難(例えば、Windowsの古いバージョンは、Javaがらみの特許侵害問題で、新規の購入ができない)な状況でもあり、制度的な側面も含めて、より議論が深まることを期待したい。 ### 4.5. 注目されているデジタルデータの保存技術があればお聞かせください。 - ビックデータを扱う(並列)分散処理システム、分散ファイルシステムやバックアップ技術 - 分散ストレージは導入しているので、今後実際に運用しながら評価していくことになる。東日本大震災をきっかけに大規模災害時のディザスタ・リカバリが話題になっているが、当館で扱うようなPBを超えるデータを遠隔地にリアルタイムで保存できる技術が必要となるだろう。 - 複数のクラウドの組み合わせ - 中小規模のデータについては、複数の民間クラウドサービスを組み合わせて、相互に同期させることでデータの保存を図るサービスなども、海外では出てきているようだ - ( 例えば、Duracloud。Amazon、Microsoft等のクラウドサービスをストレージとして使いつつ、同じデータを複数クラウドに保存することで、安全性を確保しているようです。)。国内でも、様々な技術やサービスが登場してきてほしい。 ### 4.6. 今後の国会図書館の資料保存、デジタルデータの保存の展望をお聞かせください。 - 今後も増え続ける膨大なデジタルデータをどのように保存し、利用可能としていくかが課題となる。 - ストレージのコストは今後も安くなるだろうが、膨大な情報を検索・閲覧できるようにするアプリケーションとそれを動かすサーバも必要であり、システム全体のコストを抑える必要がある。 - また、論理保存の技術をどうやって確立するかも課題となる。 - これまで当館が扱ってきた、デジタルデータは、デジタル化資料(画像データ)やインターネット資料が主だったが、オンライン資料(いわゆる電子書籍・電子雑誌に相当するもの)の収集が始まり、その何年か後には、再生機器、再生アプリケーションの問題が発生する可能性がある。そのときにどのようにして、デジタルデータを利用可能とするかが課題となるだろう。 - この問題は、国立国会図書館だけで解決できるものではない。 - 技術者・研究者の方々や、国際標準を策定してきた機関、ソフトウェアを開発、販売し、業界標準を推進させてきた企業など、様々な関係者が、現在の利用者、将来の利用者の利用を想定して、協力して取り組んでいくことが必要だ。 - そのためには、まずは課題がある、ということをもっと広く知っていただく必要があるだろう。御社にも引き続き、協力をお願いしたい。