# 19.(2012年)国立国会図書館と出版界の連携(日仏シンポジウム講演内容) 2012年11月18日 日仏シンポジウム「デジタル時代の本のゆくえ」第2部デジタル書籍と出版業界について(ずぼん19号ポット出版) ## 目次 ```table-of-contents title: minLevel: 0 maxLevel: 0 includeLinks: true ``` ## 1. はじめに 国立国会図書館電子情報部長の中山です。私からは、国立国会図書館が民間と連携することによって、電子書籍の普及や出版産業の発展にどのように寄与できるか、現在の取り組みを中心にお話ししたいと思います。 まず前提として、現在、膨大な量のデジタルな出版物がインターネット上に流通しているという事実があります。それらを網羅的に収集・保存して、将来にわたって利用を保障していくのが、国立国会図書館の役割です。しかし今の時代、それを私たちだけで実現することはもはや不可能です。今後、電子書籍の普及はもとより、デジタル化資料の利活用を促進するためには、国立国会図書館以外にも国のさまざまな機関の施策を活用し、さらに民間ビジネスとの連携も強化していく必要があります。 例えば国立国会図書館が収蔵する全資料の四分の三はまだデジタル化されていませんが、それを国立国会図書館の資金、技術だけで実施するのは困難なのです。特に、デジタル化資料の利活用に不可欠な本文内容の検索が可能なテキスト形式での電子書籍化は、国や民間の資源や研究開発成果を活用しなければ実現できないでしょう。この前提に立ったうえで、これから電子書籍の普及を目指すにあたり、出版社と国立国会図書館はいかに連携していくべきかを考えなければなりません。 ここでポイントとなるのが、電子書籍ビジネスのプラットフォームの整備、電子書籍の著作権処理の集中管理や、電子書籍の仕様決め、すなわちデジタルフォーマットやメタデータ等の共通化などです。以下、順番に紹介していきたいと思います。 ## 2. 電子書籍の保存 国立国会図書館では、電子書籍はデジタルアーカイブ、電子書庫によって永続的な保存を保障しています。分散ファイルシステムにより、段階的に拡張可能な形になっている電子書庫を、複数の拠点に分散して保存するわけです。この電子書庫は、出版社のデータベースのバックアップ機能、ディザスタリカバリ(disaster recovery /災害で被害を受けたシステムを復旧・修復すること。または被害を最小限に押さえるための備えをすること)の役割を果たすものでもあると考えています。 ## 3. 資料や資源への一元的なアクセス 国立国会図書館では、電子書籍を含めた国内の刊行物の目録を作成し、維持しています。目録では、紙資料・デジタル資料など形態の異なる書誌の情報も共通化し、統合的に検索できるだけでなく、その資料が保管されている場所までナビゲートできるシステムを準備しています。このシステムは「NDL search」?▼注4?という名前で公開されています。 ## 4. デジタル化したコンテンツの活用 国立国会図書館でデジタル化した資料は、出版デジタル機構などを通じてその本の出版元に提供するモデルも想定されます。出版社は、それを自社で電子書籍化して販売することができます。今後は、出版社がデジタル化して出版したものを当館で収集し、当館の電子書庫の中に、ダークアーカイブとして保存し、電子書籍サイトで障害が発生した場合は、この電子書庫から提供していくということも考えられます。当館がデジタル化したコンテンツの利活用の仕組みに関しては、現在文化庁でも「著作物の流通と利用に関しての円滑化に関する実証実験」が行なわれており、その中でより有効な権利処理のガイドラインやビジネスモデルが検討されているところです。 私たちとしても、その実証実験の結果を当館のサービス構築に生かしていきたいと考えています ## 5. 公共図書館へのデータ提供環境の共通化 二〇一四年一月以降は、国立国会図書館がデジタル化した資料のうち、絶版本など市場で流通困難なものについては、当館から公共図書館にデータを配信できるようになる予定です。それに向けて現在、公共図書館における電子書籍の利用環境の整備を進めています。商用の電子書籍サイトや、国内の各種電子書籍販売サイトはもとより、アマゾンのキンドル、GoogleのGoogle Play ブックスなども含めて、公共図書館におけるデジタル資料の利用環境を共通化していきたいと考えています。 電子書籍そのものの仕様についても、今後も関係機関と連携しながら共通化を進めていく予定です。 ## 6. 著作権情報の集中管理 電子書籍の著作権情報管理については、国立国会図書館と出版業界が一緒に集中管理する仕組みを、両者共同で構築・運営できないかと考えています。両者が著作権情報を共有すれば、権利処理の効率が上がるだけでなく、双方が同じ資料を重複してデジタル化するなどの無駄も排除しやすくなるからです。著作権データベース構築にあたっては、当館がこれまで行なってきた著作権処理の経験を生かしながら、関係府省や民間と協力しあい、著作物の著作権ステイタスを一元的に把握できるシステムを作りたいと思っています。これも、現在文化庁では「著作権の集中管理の促進に関する実証実験」を行なっており、今後プラットフォームの構築や運用に関する提案が行なわれることになっています。 当館もその実験に連携することで、より有効な著作権情報の集中管理システムを実現したいと考えています。 そもそも国立国会図書館では、紙かデジタルかを問わず、あらゆる資料の情報を登録できる書誌データベースを構築しています。ここには国立国会図書館の蔵書はも とより、国内の公共図書館の蔵書、さらには商用サイトで確認できる資料の所蔵機関の蔵書情報も登録されており、現時点で七〇〇〇万件以上のメタデータ?▼注5?が管理されています。既にAPI?▼注6?を使って、その情報をインターネット上で公開できるようになっており、この書誌データベースと、新たに構築する著作権情報のデータベースを組み合わせれば、その本の書誌的事項と著作権の状況を常に把握できるようになります。そうすれば、書籍の権利処理を迅速に行なうことができ、デジタル化もより一層進めることができるでしょう。 ## 7. おわりに 以上のことをふまえて、電子書籍ビジネスにおける国立国会図書館の役割を改めて考えるとすれば、それは「電子書籍の普及によって読者人口が増え、出版全体の市場が拡大して、出版ビジネスが加速されていく」という流れを支援することだと思います。その背景には、資料や情報などの文化的資産を長期保存し、その利用を将来にわたって保障する、つまり利用者にとってはラストリゾート(最後のよりどころ)、提供者にとってはダークアーカイブとなるという、国立国会図書館の役割があるわけです。私たちはそのいずれにおいても関係機関と連携しながら、今後さらに対応を進めていきたいと思います。 ## 自己紹介 中山正樹●なかやま・まさき 国立国会図書館電子情報部長。 1955年生まれ。2002年国立国会図書館入館。電子図書館事業の企画立案、デジタルアーカイブシステム、図書館サービスシステムの構築・運用を管理。2011年より電子情報部長として、資料のデジタル化、オンライン資料の収集・提供等、関係機関と連携した電子情報サービスの企画・構築、東日本大震災アーカイブの構築事業を統括。また、CIO(情報化統括責任者)として、次世代図書館サービスの構築に向けた業務システム最適化計画を策定中。業務・システムを効率化し、より創造的なサービスの実現を目指す。 注4◆NDL search……国立国会図書館サーチ。2012年1月6日よりスタートした、国立国会図書館の検索サービス。国立国会図書館をはじめ、全国の公共図書館、公文書館、美術館や学術研究機関等が持つ情報を検索できる。2014年1月末現在、90個のデータベースから収集した約9,400万件の文献情報等が検索可能。目次情報や資料の本文全文を対象とした検索、近日中に刊行される図書( 近刊図書)の検索をすることができる。 [http://iss.ndl.go.jp](http://iss.ndl.go.jp/)/ 注5◆メタデータ……データそのものに付与されているデータのこと。 注6◆API(Application Programming Interface)……開発者が、外部のソフトウェアやウェブサービスの機能を利用するための仕組み。