# 23.(2013年)我が国の知識インフラとしてのナショナル・アーカイブ構想(要約版) 平成26年2月4日 電子情報部 ## 目次 ```table-of-contents title: minLevel: 0 maxLevel: 0 includeLinks: true ``` ## 1. ナショナル・アーカイブ構築の意義と目標 - 情報化の進展とインターネットの普及により、世界的にコンテンツのデジタル化が進展している。我が国で生産されるコンテンツは、質も高く、競争力があるが、それを体系的、統合的に集約し、活用するための枠組みは、必ずしも十分ではない。 - コンテンツの流出や散逸等を防ぎ、適正かつ継続的な利用と保存を図るためには、コンテンツの創出支援から収集・保存、配信・流通に至る全体の流れを総合的に集約し、国民的利用と世界に向けた発信を可能とするナショナル・アーカイブ(以下、本文中においては「NA」という。)の早急な構築が求められている。 ## 2. ナショナル・アーカイブの定義と社会的役割 - NAとは、「我が国で公表されたコンテンツのメタデータ(所蔵情報を含む)及びコンテンツの権利の所在情報、並びに、電子的に複製可能なものにあっては、コンテンツの複製データを統合的に集約するデータベースを構築・運用し、著作者等及びコンテンツ利用者等の間で、コンテンツの弾力的な利用と継続的な保存のための一定の手続を整備することにより、我が国のコンテンツの国民的利用と世界に向けた発信を可能とするための社会基盤」である。 ## 3. ナショナル・アーカイブを構成する主要機能 NAは、次の5つの機能から構成される。 ### 3.1. コンテンツの生成機能 - 出版物のデジタル化、構造化、テキスト化、バリアフリー化等を支援し、EPUB、DAISY等をはじめとする電子書籍フォーマットの国際標準化を推進する。 - 出版物の二次利用が円滑に進むよう、裁定制度等の既存の手続の簡素化、オープンデータ化等に取り組む。 - 生成段階において、コンテンツの一意的な識別が可能となるよう、コンテンツのメタデータを、中央データベースに登録し、識別子の発行を行う。 ### 3.2. コンテンツの収集・一時保管機能 - コンテンツに識別子及び電子署名を付与し、メタデータ(書誌情報、管理情報及び権利情報)を中央データベースに登録する。 - コンテンツは、一定期間内に長期保存データベースにも複製、格納され、長期保存が図られる。 ### 3.3. 保存機能 - 保存対象は、保存用コンテンツ、一時保管コンテンツ、書誌・目次・索引情報、組織化情報、権利情報、保存のために必要な技術情報及び流通管理関係情報が考えられる。 - 保存機能を担うシステムとしては、OAIS参照モデルに準拠したシステムを視野に置く。 - ダークアーカイブは、とにかく収集し保存する上で有効な方式だと考えられる。どのような形態のダークアーカイブとするかは、当該コンテンツに対する利害関係者との合意に基づいて決定されることを想定する。 - 維持が困難になったデジタルアーカイブそのものあるいはアーカイブ内のコンテンツをNAが引き取ることも必要である。 ### 3.4. 権利情報・管理情報の収集・管理機能 - 著作物の識別子を管理するデータベースでは、各著作物の固有情報(名称、著作者等)のほかに、各著作物の著作権管理に関する情報(著作権者、著作権の管理を委託された著作権等管理事業者、使用料等)を参照できるようにする。 - 著作物の識別子を管理するシステムに著作権等管理事業者による使用料の徴収等を代行する機能を持たせることにより、著作権処理をより簡便に行えるようにすることも考えられる。 ### 3.5. 配信・流通機能 - ファイルフォーマットの異なる電子書籍やデジタルコンテンツを一元的に利用できる共通配信プラットフォームをNA上に構築する。 - 共通プラットフォーム上で、ユーザが様々な電子書籍やデジタルコンテンツを一元的に検索し、求めるコンテンツを、必要に応じて購入したり、図書館から借りたり、また、無償コンテンツについては、自由に閲覧することができるような統合検索サービス(ポータルサイト)を構築し提供する。 ## 4. 国立国会図書館の役割 各セクター、関係機関との連携によってNAを構築することを前提とし、その中でNDLはおおむね次の役割を担う。 ### 4.1. コンテンツの生成機能 - 中央データベースの構築及び運用において、中核的な役割を果たす。具体的には、CIP(Cataloguing In Publication)、クラウドソーシング対応等を含め、電子書籍等のビジネスプラットフォームとして活用するための大幅なシステム機能拡張を行い、コンテンツの生成段階における情報の組織化を目指す。 - NDL資料(紙資料及びデジタル化資料)について、権利処理及び二次利用手続における簡素化と利便性向上を図り、NDL以外の主体によるNDL資料のデジタル化を推進する。 - 出版物のデジタル化、構造化、テキスト化、バリアフリー化等を支援し、EPUB、DAISY等をはじめとする電子書籍フォーマットの国際標準化を推進する。 - サイト、タイトル、巻号、記事、マイクロコンテンツ、ファイル等、多様な粒度で流通するデジタルコンテンツに対応した識別子体系を整備する。 ### 4.2. コンテンツの収集・一時保管機能 - コンテンツに識別子及び電子署名を付与し、中央データベースへの登録を行う。照会に応じ、コンテンツの受入等に係る証明を行う。 - 商用等コンテンツの複製データを収集する。具体的には、有償オンライン資料収集実証実験事業を、NAにおける商用等コンテンツの収集の先駆けとして位置付ける。 - 非商用等コンテンツについては、平成26年2月にリリース予定のオンライン資料の送信による収集機能を活用し、コンテンツの収集を図る。 - HTML等で構成される表層Webのコンテンツについて、我が国のインターネット文化の足跡を後世に残すため、.JPドメイン全体を広く体系的に収集・保存することも視野に入れる。 ### 4.3. 保存機能 - NDLが所蔵するコンテンツに関しては、OAIS参照モデルが想定するすべての機能を備えておくことがコンテンツ管理の観点から合理的である。 - ディザスタ・リカバリについては、他のNA構成機関との共同により実現することは考えられる。 - マイグレーションやエミュレーションについては、他の専門機関に委ねる、情報の所在、内容記述、権利情報、入手可能性などについての情報はNA全体のシステムが処理する、逆に当該情報についてはNDLが一元的に管理するといった分担方式も検討する。 ### 4.4. 権利情報・管理情報の収集・管理機能 - NDLは、中央データベースへの著作物の識別子の登録作業を、出版者等の協力を得て行う。 - 著作物の識別子等を管理するデータベースに対して、著作者情報(人名典拠)、コンテンツに表示されている情報(クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの適用等)、NDLが申請した裁定結果の情報等を登録する役割を担う。 ### 4.5. 配信・流通機能 - NA配信プラットフォームを通じて、商業ベースで流通しないコンテンツの一部を配信する役割を担う。 - 配信プラットフォームを利用するに当たっては、当該プラットフォームの運営主体に使用料を支払うことで、一定の経費負担を行う。 - 配信プラットフォームを通じてデジタルコンテンツの配信を行う事業者・機関に対して、標準的な書誌データ(メタデータ)を提供する。 ## 5. 実現に向けた取り組みの方向性 ### 5.1. 今後の取組課題 ### (1) 法規・制度面の整備 - 納本制度を参考にして、NAへの「納入」に関する規定を整備し、コンテンツの納入が事実上の著作権登録機能を担うようにする。 - NDLを含む公的機関所蔵情報のオープンデータ化は不可欠の要件であり、利用のための適正なルールを設定する必要がある。 - コンテンツの複製・公衆送信等について著作権の制限、裁定手続の簡素化等の措置を講じること、NAへの個人情報の提供について法令上の根拠を明確化することなどが考えられる。 - NAで保存するコンテンツについて、NDL等国の機関が行う場合は、その二次利用に関しては使用料を求めないことができるような法的規定を設ける必要がある。 ### (2) 財政面の裏付け - 出版物デジタル化、データの永久保存等基盤整備に係る分野については、公的資金の投入が不可欠と考えられるが、NA全体が発展的に機能するためには、民間流通部門のビジネスモデルを確立する必要がある。 ### (3) 人的資源の整備 - NAのセンター的機能を果たすべき幾つかの機関では、NA全体のマネジメント、研究開発等を担う専門的人材を配置すると共に、参加各機関における担当要員の確保が不可欠である。そのための訓練・養成の仕組みも整備する必要がある。 ### (4) 標準化等技術的対応 - 識別子の統一化・標準化の方向性を定めると共に、オープンデータへの識別子付与についても検討する。また、コンテンツの長期保存メディアのあり方についても、緊急に取り組むべき課題である。 ### (5) 施設・設備の整備 - センター機能を果たすための組織・施設・設備の整備は不可欠である。また、参加各機関及びNAのサービス提供施設における利用環境整備を図る必要がある。 ### 5.2. 利用促進・啓発普及活動の必要性 - 関係者・関係機関の理解・参加を促すための啓発・利用促進事業、国民各層向け広報事業、利用促進事業に取り組む必要がある。