# 28.(2014年)デジタル時代の国立国会図書館の活動 第33回日中業務交流 基調報告 2014年11月19日 デジタル時代の国立国会図書館の活動 ―電子図書館事業20年を迎えた新たな方向性の模索― 国立国会図書館 中山正樹 ## 目次 ```table-of-contents title: minLevel: 0 maxLevel: 0 includeLinks: true ``` ## 1. はじめに _昨年度は、「利用者サービスの新たな展開」として、2012__年以降の利用者サービスの動向、新時代のレファレンスサービス、国立国会図書館サーチの新しい挑戦をご報告しました。_ _今年度は、当館での電子図書館サービスの構築に着手して20__年を経過したところであり、今までの歩み(目指してきたこと、実現できたこと)、そして、今後、デジタル化、IT__技術の進展に対応したサービスの構築に向けて、どのような方向性で進めるべきかについてについてご報告します。_ 2014年は、当館での電子図書館サービスの構築に着手して20年を経過したところであり、今までの歩みと今後の活動の方向性について4つのステージに分けてご報告します。 ## 2. この20年間の電子図書館の構築の歩み(1994年~2012年) _当館では、1990年代に始まるインターネットの急速な発展を背景に、1994年に我が国で最初の電子図書館の実証実験プロジェクトを開始し、2002年から本格的なサービスとして離陸し発展させてきました。_ ### 2.1. 第1ステージ【1994~2002】揺籃期・始動期 1994年に我が国で最初の電子図書館の実証実験プロジェクトを開始し、資料のデジタル化と公共図書館の所蔵資料の総合目録の構築を進めました。 この実験では、図書館における情報の蓄積と提供の可能性を検証し、将来の電子図書館を想定したプロトタイプ環境**を**構築することを目的に、1000万ページに及ぶ資料をデジタル化しました。_その上で利用を予測して大規模ストレージに格納し、大容量のマルチメディア通信回線を用いて試行提供しました。_この実験での_技術課題の_検証を踏まえ、1998年「国立国会図書館電子図書館構想」を策定し、それ以降の電子図書館構築の骨格を明らかにしました。 ### 2.2. 第2ステージ【2002~2012】サービス離陸期・発展期 電子図書館サービスを開始し、発展させてきた時期で、2002年に開館した関西館を拠点として、「近代デジタルライブラリー」の公開、インターネット資源の選択的収集事業(WARP)、各種の電子展示会等を公開・提供しました。 2003年には、政府においてe-Japan重点計画2003が策定され、「国のデジタルアーカイブ構想」、「ジャパン・ウェブ・アーカイブ構想」が掲げられ、それにあわせた形で、2004年2月に、「国立国会図書館電子図書館中期計画2004」が策定されました。 この中期計画では、デジタルコンテンツを広く提供するために、当館が国のデジタルアーカイブの重要な拠点となること、日本のデジタル情報全体へのナビゲーションを行う総合サイトを構築し、利用者がワンストップで利用できるようにすることを目指しました。【スライド2】 この計画に基づき、2004年10月から、様々なデジタルアーカイブ内の情報を統合検索する仕組みの実用性を検証するために、デジタルアーカイブポータルプロトタイプ(ndldap)を開発し、2005年7月に試験公開しました。その後、実用システムとして「PORTA」を構築し、2007年10月に正式公開しました。以降、全国の図書館や、博物館、美術館、公文書館等の文化機関との連携先の拡大を進めると同時に、「PORTA」の後継として、国立国会図書館サーチ(NDL Search)の開発を進め、2010年8月に試験公開、2012年1月のシステムリニューアル時に、新NDL-OPAC等と併せて、正式運用を開始しました。 資料のデジタル化に関しては、2009年5月から大規模なデジタル化が開始され、2011年までに、冊子体としては230万冊、約2億枚の画像をデジタル化しました。また、2010年4月には 国等のウェブサイトの制度的な収集が開始されました。 ### 2.3. 知識インフラの構築を目指して また、2010年 に、我が国の第4期科学技術基本計画の策定に向けて決定された「科学技術基本政策策定の基本方針」(2010年6月総合科学技術会議基本政策専門調査会決定 )で、「文献から研究データまでの学術情報全体を統合して検索・抽出が可能なシステム(「知識インフラ」)の展開を図る」という方向性が提示されました。これを踏まえて、当館において、2011年に「第三期科学技術情報整備基本計画」を策定しました。「知識インフラ」とは、情報資源を統合して検索、抽出することが可能な基盤で、国内の各機関が保有する情報を知識として集約し、新たな知識の創造を促進し、知識の集積・流通・活用と創造するサイクルの構築を目指すものです。 _新たな知識の創造のためには、分野を越えた知識の関連付けが必要であり、日本中に散在するコンテンツの所在を集中管理し、そこに検索をかければ、関連する全ての必要なコンテンツが得られるようにするものです。そこでは、単に情報を集めたものではなく、関連するものが有機的に結合され、ネットワーク的に統合化されたものであり、日本中にある芸術を含んだあらゆる学問・研究のコンテンツ、研究ツール、社会状況データ等が知識の形に組織化され、これらの知識・情報が公開され、全ての人が共有できることを目指すこととされました。_ ## 3. 2012年以降進めてきたこと ### 3.1. 第3ステージ【2012~2014】総括と再始動期、見直し期 これまで進めてきたサービスの総括と新たな方向性を示す時期です。新たな事業・サービスとして、民間オンライン資料制度収集(2013年7月)、図書館向けデジタル化資料送信サービス(2014年1月)を開始しました。 ### 3.2. 2012年1月のシステムリニューアルの総括と、次期業務システム最適化計画(2013~2017)の策定 2012年のシステムリニューアルにおいて、パッケージ製品を核として構築したシステムに、基幹業務・サービスを適合させました。これにより、システムの最適化は進み、またデジタルコンテンツによる利用者サービスも拡充しました。_必要なサービス要件を満たすパッケージの選定、パッケージに合わせた業務フローの見直しが十分とは言えず、結果として、多くの機能を外付け開発し、また、新しいシステムに対する利用者からの苦情も多く寄せられましたが、チューニングを行うことにより、現在は安定的に稼働しています。_2012年後半にシステムリニューアルの総括を行い、更なる最適化とサービスの向上を目指した2017年度までの業務システム最適化計画を策定しました。 - _システムリニューアル_ - _2008年度から2012年度までのシステムリニューアルの実施では、パッケージ製品を核として構築したシステムに、基幹業務・サービスを適合させ、同時に類似のシステム群を統合する取組を行った。_ - _システムリニューアルの総括として、企画(サービス要件定義)、業務要件・システム化要件定義、業務・システム構築、移行・研修の各段階での合意形成、各工程での実施内容の妥当性を評価できるスキル向上が教訓として洗い出された。_ - _システムのリニューアルにより、当館の業務・システムの最適化は進んだが、緊縮予算の中にあっても発展していく当館のサービスを業務・システムが支えるためには、更なる最適化が不可欠である。__次期の業務システム最適化計画を策定した。_ - _業務システム最適化計画_ - _当館システムに求められる要件_ - _①関係機関との分散収集・保存を可能にすること_ - _②効率よく電子資料を保管・閲覧できる電子書庫_ - _③利用者のニーズに合ったユーザインタフェース_ - _④当館の情報を活かした高度な検索_ - _⑤外部システムからのスムーズなデータアクセス_ - _方針と目標_ - _①特性を考慮したシステムの統合_ - _②共通するシステム要素の集約と汎用化_ - _③継続的な業務・システムの最適化_ - _④業務を効率化する小さなツールの推進_ - _⑤外部委託範囲の見直し_ - _⑥システムハードウェアの最適化_ - _ⅰ)サーバの仮想化_ - _ⅱ)クラウドサービスの利用_ - _ⅲ)信頼性要件の見直し_ - _⑦システム運用の効率化_ - _⑧分散ファイルシステムの活用_ ### 3.3. 「私たちの使命・目標2012-2016」の策定 当館として今後果たすべき使命とおおむね5年間にわたって取り組むと目標して、「私たちの使命・目標2012-2016」を策定し、デジタル時代に適合した図書館を目指しています。 _「私たちの使命・目標2012-2016__」では、「国立国会図書館は、出版物を中心に国内外の資料・情報を広く収集し、保存して、知識・文化の基盤となり、国会の活動を補佐するとともに、行政・司法及び国民に図書館サービスを提供することを通じ、国民の創造的な活動に貢献し、民主主義の発展に寄与します。」としています。_ - 基本問題の検討 _デジタル情報時代における課題を洗い出し、緊縮財政の中で、如何にして資源を確保して当館の事業を進めていくかの検討を始めており、まず、当館としての蔵書構築、利用者者サービスのあり方から着手しています。_ ### 3.4. 東日本大震災アーカイブ 2011年3月には、東日本大震災が発災し、甚大な被害をもたらしました。この被災・復興の記録を後世に残すとともに、今後の防災・減災に役立てるように、知識インフラの構築の一環で、分野を特定した実現形の先行事例として、2013年3月には、大震災に関するあらゆる記録、記憶を保存し、一元的に検索できるようにする「東日本大震災アーカイブ(ひなぎく)」を構築しました。構築に当たっては、図書館サービスを効率的、効果的に進められるように、次世代技術の実用化実証実験に取り組み、成果の積極的な活用を図りました。 _アーカイブでは、クローラによる収集のみならず各機関が収集した映像・観測データ等を受け取ることを想定して、理能力、ストレージ容量を必要に応じて増強できる仕組み、として、分散処理サーバ、分散ファイルシステムを導入しました。また、大震災アーカイブ自身が、災害で消失してしまわないように、ディザスタリカバリも考慮しました。また、画像・映像なども的確に検索ができるように、明確なメタデータが付与されていない情報にも可能な限りメタデータを自動付与する仕組み、本文も含めたテキストの全文インデキシング等の実装を考慮しました。_ ## 4. 今後10年で目指すところ(2015年~2024年) ### 4.1. 第4ステージ【2015~2024】本格的なデジタル情報の普及期、サービスの変革期 次のシステムリニューアルが予定される2020年から展開されるサービスの構築に当たっては、今後の社会の要請、情報技術の実用化動向を想定した図書館サービスの姿と、その実現に向けて実施すべき事項を明確にする必要があります。 知識インフラの実現形として、様々な分野のあらゆる記録を情報として集約し、相互に関連付けて知識化し、将来にわたって利用を保証して、「社会・経済的な価値を創出」できる「新たな知識の創造と還流」の仕組みを構築することを想定しています。 ### 4.2. 2020年から数年の予測と、国全体での対応 我が国では、「知的財産政策ビジョン」(2013年6月7日知的財産戦略本部)等により、今後10年を見据えた政府の取組が示されました。従来の事業モデルの「改善」だけでなく、事業モデルそのものを創造・転換する「イノベーション」を創出すること、あらゆる分野の知的財産を対象としたビッグデータも含めたクラウド化、_非営利目的での利用のみならず産業利用も含めたコンテンツの多岐にわたる利活用の仕組み(_オープン化_)_、_ユーザが共同でコンテンツを制作する_クラウドソーシング、_産業競争力強化のための_知財人財の育成・確保、_新しい産業の創出環境の形成に向けた制度整備、_コンテンツの権利処理の円滑化、電子書籍の普及促進、_コンテンツがプラットフォームをリードする_エコシステムの実現、_データの収集・蓄積・分析による_多様な付加価値の創造の研究開発、日本の伝統や文化_に根ざした魅力あるコンテンツ・製品など_の発掘・創造等が示されています。 _このビジョンが想定する10__年後の社会の姿の実現に向けて、国全体の方針として、「__経済財政運営と改革の基本方針__2014__」、「学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想ロードマップ」等、具体的な実施に繋がる計画が検討されています。_ _学術情報ネットワーク(__SINET__)の整備に関する提言、ロードマップは、大学を中心とした機関での学術分野にフォーカスしたものではあるが、文化資産を含めたデジタルコンテンツの保存・活用基盤での課題と整備すべき内容と、かなり重なっているもので。国全体のアーカイブ構築の施策は学術分野の成果を活用することで、効率的・効果的に構築できると思われます。_ _◎今後10年を予測_ - _今後10年は、出版形態の主体が紙からデジタルへ移行する時期_ - _出版物としての流通から情報としての流通へ。⇒収集の主体がデジタルへ移行_ - _収集の主体がデジタル、情報としての組織化、物と情報の保存、提供はデジタルが主体_ - _コンテンツ生成_ - _当館所蔵資料のデジタルコンテンツ化率はかなり高くなっているであろう_ - _(関係者協議内容が見直されて)全文テキスト化も可能になって、ハイブリッド型の電子書籍化も行えているであろう_ - _出版社による電子書籍販売サービスのビジネスモデルは成熟しているであろう_ - _少量出版物は、PODに移行しているであろう_ - _孤児作品や絶版作品、フェアユースのための法制度が導入され、容易に電子書籍化ができるようになっているであろう_ - _公的資金で作成された出版物は、オープンアクセスになっているであろう?_ - _収集_ - _現在のような閲覧を不可にするDRMでなく、電子透かし的なDRMに代わっているだろう_ - _収集の主体はデジタル化コンテンツになっているであろう_ - _当館によるオンライン資料(電子書籍・電子雑誌等)の収集は軌道に乗っているであろう_ - _組織化_ - _物としての組織化から、マイクロコンテンツとしての情報の組織化へ移行?_ - _保存_ - _紙とデジタルでなく、媒体としての長期保存、情報としての利用、情報の長期保存_ - _原本性を保証する役割を果たすことが必要である_ - _一つの識別子で、バージョンを管理することは現時点においても可能となっている_ - _提供_ - _提供の主体はデジタルコンテンツになっているであろう_ - _来館者の閲覧・複写申込みは、デジタル化コンテンツが主流となっているであろう_ - _当館、公共図書館では、商用の電子書籍販売サービスを活用しているであろう。_ - _閲覧提供は、有償オンラインとして収集した情報か、電子書籍サイトかは、予想できない_ - _当館のデジタル化資料送信サービスもほとんどの図書館で利用されているであろう。(海外の図書館も、出版社への支援活動が功を奏していれば、自宅への配信も可能になっているかも知れない)_ - _登録利用者への特別サービスが考えられる_ - _有償で、付加サービスも_ - _デジタル複写サービス_ - _認証も、マイナンバー、Open-ID_ - _図書館資料を有償で利用することの結論は10年では出ないだろう_ - _ファクトデータ_ - _研究データは、学術情報基盤でビッグデータとして利用可能になっているであろう_ - _ウェブアーカイブ_ - _収集するインターネット情報は、公共機関、NPO、民間に広げている。_ - _セマンティックウェブ技術や、新しい技術開発が進み、人工知能(AI)も実用レベルになっているであろう_ - _ウェブアーカイブとデジタルアーカイブの情報が関連付けられる技術も相当進展している_ - _その意味でも、現時点では、可能な限り収集を拡大していくべき_ ### 4.3. アーカイブに関連した国の活動の方向性 _これからの当館の電子図書館事業の展開を考える上で、国全体の議論として押さえておきたい。_「知的財産政策ビジョン」に基づく国の施策の中で、当館に直接関連する計画として、電子書籍化と利活用の促進に関する構想【スライド3】、デジタル文化資産の保存・活用に関する構想、学術情報の公開と共有の拡充に関する計画、大規模災害の記録と記憶の保存などのアーカイブの構築等が検討されています。 _その中で取り上げられている文化的資産は、無形・有形を問わず、また媒体を問わず、多岐にわたっており、様々な機関により分散してアーカイブされています。_ これらは、目的は異なっていても、対象とする文化的資産は相互に関連するものであり、知識インフラを目指した仕組みとして、国全体で_文化関係資料の価値を高め、新たな文化や情報を生み出す_社会基盤として、「恒久保存・継承・公開・活用」が可能な、ナショナルアーカイブとなることが望まれます。【スライド4】 ### 4.4. 必要な機能の想定 _このようなアーカイブは、我が国の多様な文化を知識として保存・継承する役割、様々な分野の専門家が参加し、新たな文化を知識として創造していくための社会的な基盤としての役割、それらの知識を利用目的に応じて発信する役割、そして、これらの仕組みを統括し運用していく役割が考えられ、文化的資産を館種毎に集約している拠点と、新たな知識を創造し発信するしている拠点等が分担して構築・運用していくことが必要です。_これを実現するために、以下の役割を持つ基盤が想定されています。 #### (1) 恒久的保存基盤 様々な分野・機関_での個別目的のアーカイブ_に共通のプラットフォームを提供し、恒久的な分担保存を行うとともに、_それぞれのアーカイブの中にあるコンテンツの中から_必要な情報を_分野横断で的確に絞り込んで検索し_取り出せるようにしたバックヤード的な役割です。_当館が収集したデジタルコンテンツのアーカイブである_国立国会図書館デジタルコレクション、インターネット情報収集蓄積事業(WARP)、東日本大震災アーカイブ(ひなぎく)、全国のアーカイブをネットワーク化した国立国会図書館サーチ(NDLサーチ)の_アプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)__機能_をベースとして、情報間を_機械的に_連携させるセマンティックウェブ技術_、リンクデータ化_等による実現が想定されます。 - _恒久保存と利活用のための共通プラットフォームを作る_ - _分散アーカイブの構成_ - _恒久的保存基盤は、1つのサイトにすべてを集約するのではなく、各機関のアーカイブを集約する分野毎のノードがあり、それを集約拠点に集め、これらが相互にコンテンツを持ち合って、障害、災害に備えて将来にわたって利用を保証する仕組みを想定。(いわゆるP2Pネットワークのイメージ)_ #### (2) コンテンツ創造基盤 _現在は、個々の分野のアーカイブは、閉じた世界での価値として創造され蓄積されているので、それの原作の書籍等、他の分野の情報と関連付けられていません。_ 異種のアーカイブと結び付いて、_お互いの_コンテンツが人を媒介にして、_それにより_新しい価値を生み出すものとして、_それぞれの分野の専門家である_キュレーター、ライブラリアンの能力の発揮の場で、保有する情報に付加価値を付けたり、他の分野のコンテンツと関連付けて、二次的著作物を創造したり、元になったコンテンツへナビゲートできるようにして_、ここで生成された情報が、_新たな知識として恒久的保存基盤に蓄積することが想定されます。 - _現在のヨーロピアーナとの違い_ - _現在のヨーロピアーナは、どこにどういうものがありますというのが検索できるもの。一部ギャラリ的なものも提供(NDLの電子展示会レベル)、あとは考えてごらんなさいというもの。⇒現在のNDLサーチのレベル_ - _玉も石も一緒に出てくるので、基本的に件数は多いけれども、そこから何かを学ぼうとはなかなかいかないレベル_ - _日本がやるからには、そのレベルを超えて、玉石混交ではなくて、ちゃんと__キュレーションのレイヤーが入る。__全国の博物館、美術館の人たちの本当の仕事はここを作ること。_ - _データを磨いて、自分たちの持っているものの価値をいろいろなところに発信してつないでいくことが、これからのキュレーター、ライブラリアンの仕事_ #### (3) 情報発信基盤 _「見るだけのアーカイブ」から「使い、創り、繋がり、伝えるアーカイブ」として、_広く国民による新たな知識の創造、新産業の創出、科学技術イノベーション、教育活用、地域活性化、国際文化交流、防災情報等、様々な利用者毎の目的に応じて、恒久的保存基盤に格納された一次情報、コンテンツ創造基盤で創出された二次的情報を有機的に組み合わせて、利用できるようにする基盤です。 国民が文化芸術を鑑賞し、また、_日本遺産(__Japan Heritage__)としての魅力ある_日本文化を発信する分野では、文化庁が構築している「文化遺産オンライン」をベースとして、単なる分野横断的な検索だけでなく、新たに創造された知識と併せて発信する日本らしいEuropeanaの形を目指します。 また、大規模災害防災・減災情報に関しては、「_東日本大量災アーカイブ(_ひなぎく_)_」をベースに、大規模自然災害の地震、津波、降雨・水位等の_ストックデータ、リアルタイム_データを発信するポータルの新設、_学術分野の__高度な研究成果の発信は、国立情報学研究所が運営している「学術情報ネットワーク(__SINET__)」をベースに__、また、_文献情報に関しては、国立国会図書館サーチの_国立図書館デジタルコレクションのユーザインタフェース(GUI__)_をベースとすること想定します。 #### (4) 運用基盤 _データ保存課題、人材不足問題、資金不足問題、権利処理コスト問題など、デジタルアーカイブの活性化を阻害する課題を制度的に克服する方策(__人材育成策・予算措置・権利処理に関する法改正など)__を導き出し、解決を図っていく中核的な役割を担う推進母体(__司令塔)__としての組織・体制も必要です。この基盤では、_ナショナルアーカイブ全体の戦略企画、デジタル情報の保存や利活用のための調査研究、研究開発、デジタル化支援、アーカイブに所蔵された資料に関する知識、読解力とIT技術の知識等も備えた高度な専門的人材の育成、孤児著作物の権利処理や、_絶版作品のデジタルアーカイブ化における所有権、肖像権問題も含めた_権利情報DBの構築を促進する等の役割を持つことを想定します。 - _◎デジタルアーカイブとして必要な機能_ - _デジタル化機能_ - _デジタル化(スキャンニング)、OCR化、構造化(文書構造、LOD化)、テキスト化(EPUB、DAISY等)_ - _デジタル化ガイドライン_ - _コンテンツの収集・一時保管機能_ - _識別子付与、メタデータDB登録、提供用コンテンツ_ - _保存機能_ - _デジタルデータの恒久保存環境整備_ - _デジタル化、収集・組織化・保存・提供のすべての機能を研究開発成果の活用。(産学官での共同による実用化実証実験)_ - _分散デジタルアーカイブ、ディザスタリカバリ環境_ - _アーカイブは民間で継続的に行うことは困難。また、1つの機関で維持することも困難。_ - _物理保存(消えてしまわないように)_ - _物理媒体の長寿命化_ - _寿命前の他の物理媒体への移行対策_ - _論理保存(使えるように)_ - _フォーマット変換_ - _(マイグレーションとエミュレーション)_ - _OAIS__フレームに準拠した保存管理機能(保存用のメタデータの管理、アーカイブ情報パッケージ(AIP)_ - _標準仕様の策定を推進した機関が、新たな標準仕様へのマイグレーションを保証する責務を持たせる_ - _恒久的なデータ保存(ダークアーカイブ(100年1000年メディア:原則触らない))_ - _民生品としてマーケットが見えないため、民間での技術開発が進まない_ - _保存と利活用のためのデータ保存_ - _短期的な対処として、物理媒体のマイグレーションを自動化した分散ファイルシステムの適用_ - _長期的な対処として、拠点分散を自動化したネットワークシステム(P2Pネットワーク等)_ - _権利情報・管理情報の管理機能_ - _識別子を付与し、コンテンツの利用に関わる著作権の存否、所在に関する情報、デジタル化状況を管理_ - _関係機関が保有する情報を関連付けて、出版界、図書館界で活用する_ - _利活用機能_ - _一元的に関連情報を含めて検索し、閲覧及び二次利用できる仕組み_ - _分野横断的検索システム(NDLSearchをベースに)_ - _目的別利用促進の取り組み(文化遺産オンラインをベースに)_ - _研究開発、実用化実証実験(産学官の研究開発成果を活用)_ - _デジタル化、収集・組織化・保存・提供のすべての機能の__構築にあたっては産学官の研究開発成果の実用化実証実験を行い、有用性が認識された技術を適用_ ### 4.5. 今後のNDLの活動の方向性 _国全体のアーカイブ構築の中で、当館は何をしていくべきかを考えます。_ 当館は、唯一の国立図書館として、納本制度、インターネット資料**の**制度収集、オンライン資料の制度収集、保存のためのデジタル化等、法律により「権限」が与えられており、確実な収集・保存・提供の実施の「責任と義務」を負っております。しかし、紙媒体の情報については国内の出版物に限られており、しかも、100パーセント完全に収集できているわけではありません。更に、デジタル化された出版物は、全てを1つの組織で収集・保存すること自体が不可能です。当館が主体的にアーカイブできる部分は「選択的」にならざるを得ませんが、可能な範囲ではなく、他の機関に分担の「協力」を求め、国全体で、_文化資産のアーカイブの_網羅性を確保することにより、当館の使命・目標の達成を目指すことが重要です。 ### 4.6. 選択と協力 当館が、あらゆる情報のうち「選択」して収集、保存する情報の種別は、文献情報**が中心**であり、国内で刊行される冊子体の出版物、デジタル化されて流通する出版物です。各府省や関係機関等には、個々のアーカイブ構築において、標準的な仕様(通信規約、メタデータ、永続的識別子等)の適用によるリンクデータ化、オープンデータ化を推進することの「協力」を求めたいと考えています。 国としてのアーカイブの基盤においては、当館は、「恒久的保存基盤」を主管し、必要な情報を的確に取り出せるようにすること、「コンテンツ創造基盤」の分担として、文献情報等に基づいてライブラリアンが作成するレファレンス情報、調査報告書及び、電子展示会の創作を行うこと、「情報発信基盤」の分担として、国会関連情報、文献情報、ウェブアーカイブ情報等の発信サービスを行うことを想定します。その概念は、この20年、当館が進めてきたデジタルアーカイブ構築の発展形であり、また、「ひなぎく」で進めてきたあらゆる記録・記憶を保存する役割と同義のものとして位置づけられます。 ## 5. 図書館における情報システムの役割 _当館の使命・目標の達成を目指して、社会的な存立意義を維持向上できるようにするため、業務・システムの効率化に留まらず、市場ニーズ、利用動向の変化に対して、実績・予測情報の確認、分析、対応の指示を速やかに行えるように、業務・組織を再構築するための計画を策定することが重要です。_ _情報システムは、今までは、人海戦術的な業務を情報システムに置き換えることによって、図書館サービスの高度化、業務・サービスの運営の効率化・コスト削減のための手段として活用してきました。政府における「電子政府構築計画」も同様です。今後は、電子情報の特性(共有・連携のしやすさ、検索の高度化、情報移動の容易さ等々)を生かした__デジタル情報時代の電子図書館サービスの構築を目指すとともに、民間企業で積極的に導入されている組織の持つ様々な資源(人材、資金、設備、資材、情報など)を統合的に管理・配分し、業務の効率化や経営の全体最適を目指す手法を支援するツール(ERP)、ビジネスプロセスを可視化しプロセスの分析、業務改善検討、モニタリングを行うことを通じて、継続的にビジネスプロセスの改革を推進するマネジメントツール(BPM:Business Process Management)の導入など、業務実施状況の迅速な数値化、可視化により、経営の強化、業務の最適化、変化への対応を速やかに行えるようにすることが、情報システムに求められていると考えます。1994年に国内機関の中で先行する形で始めて20年を経た当館の電子図書館サービスの進展が加速されないのは、人員・予算・著作権などの問題がありつつも、当館の使命・目標の達成を目指して、社会的な存立意義を維持向上できるようにするため、業務・システムの効率化に留まらず、市場ニーズ、利用動向の変化に対して、実績・予測情報の確認、分析、対応の指示を速やかに行えるように、業務・組織を再構築するための計画を策定する経営判断のための情報を速やかに提示できなかった情報システムにも一因があったとも考えられます。今後は、社会環境変化への迅速な対応」および「業務プロセス改革」を実現するために、経営戦略とIT戦略を密に連携・融合させ、最大限の効果を発揮させることが重要です。_ ## 6. おわりに デジタル情報時代を踏まえ、物理媒体としての原資料は文化財として保存するために、デジタル化していく必要があり、一方では、収集すべき出版物は、物理媒体からデジタル化コンテンツへ移行しつつあります。このようにデジタル化が進む状況において、文化的資産をあらゆる人々が将来にわたり享受、活用できるようにし、人々の創造的な活用に貢献するためには、社会全体でデジタル情報資源の充実に取り組む必要があり、デジタルアーカイブは重要な役割を果たすことになります。 産学官のそれぞれの組織は、それぞれの所掌範囲で「デジタルアーカイブの構築と利活用」の施策を計画していますが、これらの施策が同一の方向性を持って、相互に資源を補完し合っていく必要があります。当館は、ナショナルアーカイブを構築し、さらに、日中韓電子図書館イニシアティブ(CJKDLI)でのポータル、世界レベルでの「インターナショナルアーカイブ」の構築へと発展することを目指し、その一翼を担っていきたいと考えています。