# 6.(2006年)Web2.0世代のデジタルアーカイブポータルの提供を目指して (国立国会図書館デジタルアーカイブポータルの現状と今後) Current status and future of NDL Digital Archive Portal - portal service of digital archives in the Web 2.0 era- 2006年9月1日 久古聡美 1 ; 吉田曉 1 ; 中山正樹 2 KYUKO Satomi 1 ; YOSHIDA Satoru 1 ; NAKAYAMA Masaki 2 ## 目次 ```table-of-contents title: minLevel: 0 maxLevel: 0 includeLinks: true ``` ## 1. 要旨 国立国会図書館が目指している「国立国会図書館デジタルアーカイブポータル」は,広く国のデジタルコンテンツ全体へのナビゲーションを行うことを目指すものである。平成19年度以降の稼働に先立ち,プロトタイプを構築し「統合検索」のために必要な機能の検証を行ってきた。本稿ではプロトタイプの概要を示し,さらに今後の方向性について述べる。デジタルアーカイブを保有する各機関にウェブサービスによるサービス提供機能の実装を呼びかけると共に,Web2.0時代にふさわしいポータルの構築を目指し,機械的な連携とデジタル情報の一層の利活用を図る。 The National Diet Library (NDL) is planning to construct NDL Digital Archive Portal, which aims at navigating its users to any digital information in Japan. Before establishing the system, which will happen at the beginning of fiscal year 2007, we have constructed its prototype system, and have verified the required functions. In this paper, we will show the outline of this prototype system and our plan. We not only construct the portal site according to Web 2.0, but we also encourage digital archives of other institutions to implement the service functions using web services. These actions will increase the automatic coordination between systems and improve the usability of the digital information in Japan. ## 2. キーワード デジタルアーカイブ,ポータル,ワンストップナビゲーション,ダブリン・コア,辞書,Web2.0,OAI-PMH,SRW,RSS,CGM,ウェブサービス,SOA Digital Archive, Portal, One-Stop Navigation, Dublin Core, Dictionary, Web2.0, OAI-PMH, SRW, RSS, CGM, Web Service, SOA ## 3. はじめに 国立国会図書館(以下,「当館」という。)では,国のデジタル情報全体へのナビゲーションを行う総合的なポータルサイトとして,「国立国会図書館デジタルアーカイブポータル」(以下,「ポータル」という。)の構築を目指している。これは,当館の所蔵資料のみならず,当館が所蔵していない情報に関しても所蔵元へ案内する役割を果たすものであり,有用な各機関が提供しているデジタルアーカイブ内の著作物を,「いつでも,どこでも,どこにあっても」,ワンストップで検索,閲覧できるようにして,資料の利活用が促進されることを目指している。 当館では,当館を含む公共図書館の蔵書目録を一元的に検索できるようにする事業を実施しているが,デジタル情報に関しても同様の仕組みの提供が必要である。当館は,蔵書のデジタル化を進め,インターネットで提供している。また,各機関がインターネット上で提供している情報を収集し,長期保存している。しかし,リアルタイムに更新されるすべてのインターネット情報を当館が収集し,提供することは現実的ではない。 また,今までの検索エンジンでは,データベース内の著作物を直接検索することは困難であった。ポータルは,その各機関が保有するデジタルアーカイブ内のコンテンツを中心に「統合検索」し閲覧できるようにするものである。 「統合検索」とは,複数のデジタルアーカイブシステムのコンテンツを検索対象とし,次に挙げる点の実現を想定しているものである。 - 一つのキーワード入力画面(検索窓)から検索できること。 - 検索結果はデジタルアーカイブの所在や様態に依らず統合的に取り出すこと。 - 可能な限り検索結果から利用者が目的とする情報そのもの(一次情報,又は,紙媒体の資料はその入手元)までたどりつけるようにナビゲートすること。 さらに,ポータルサイトの機能として,利用者の情報行動を支援するための様々な機能や仕組みを充実させていく必要がある。一つの方向性として,Web2.0の概念を取り入れる可能性を考えている。 当館では,平成19年度以降の稼働を予定しているポータルの構築に先立って実験システムであるプロトタイプシステム(以下,「プロトタイプ」という。)を構築し,その試験提供を行ってきた。本稿では,まずプロトタイプ構築に関する概要と主な機能及びそこでの検証成果について紹介する。次に,Web2.0時代にふさわしいポータル機能の提供及び今後の方向性に関する考察を行う。 ## 4. プロトタイプシステムの構築 プロトタイプは,ポータルの構築に先立って,サービスの有用性及び適用技術の妥当性に関する検証を行うために構築し,試験提供を行うものである**注****1)**。平成16年度から開発に着手し,平成17年7月には一般への試験公開を開始した。 [![](https://www.notion.so/image/dropped_image-8.png)](https://www.notion.so/image/dropped_image-8.png) 公開後は,試用をしていただいた方々からご意見をいただくと共に,検索機能等について開発の立場から次々と課題等が洗い出されてきた。平成17年度は,これらの検証成果を踏まえて機能強化を進めた。新たに機能を開発するとともに,問題点の改善を行い,随時プロトタイプ上で追加公開していった。検索対象は,他機関のご協力を得ながら順次追加していき,現在は,次に挙げるデジタルアーカイブシステム全14種類が検索対象となっている。([ ]内は,所蔵機関又はご協力いただいた機関) - 書籍,出版物,目録等 - 青空文庫 [青空文庫] - 近代デジタルライブラリー [NDL] - NDL所蔵貴重書サンプル(サンプル的にデジタル化したもの) [NDL] - 貴重書画像データベース [NDL] - 国立公文書館デジタルアーカイブ・システム [国立公文書館] - 新書マップ [NPO法人連想出版] - NDL蔵書目録 (和図書・和雑誌) [NDL] - NDLプランゲ文庫(日本占領期検閲資料コレクション)雑誌・新聞目録 [NDL] - NDL雑誌記事索引(2005年分のみ) [NDL] - 有用サイト,データベース情報 - 府省所管のデジタルアーカイブサイト情報 [内閣官房] - Dnavi(データベース・ナビゲーション・サービス) [NDL] - 郷土情報 - デジタル岡山大百科 [岡山県立図書館] - その他の参考情報 - カレントアウェアネス [NDL] - レファレンス協同データベース [NDL] ### 4.1. プロトタイプの各機能 統合検索では,キーワード検索に加えて自然文から検索する連想検索や分類を通じての検索など,複数の角度からデジタルアーカイブが検索可能となっている。各機能を用途に応じて使い分けることで,情報探索の幅を広げることが狙いである。 ここでは,プロトタイプで提供している統合検索の各機能について紹介する。 #### (1) 統合検索(キーワード検索) キーワード検索は,利用者が入力したキーワードに合致するデータを含む資料を検索する。 例えば,キーワード「吾輩 猫」を入力し,検索ボタンを押すと,検索結果が一覧表示される(図2参照)。ここで,「吾輩ハ猫デアル」が二つ得られるが,一つは「青空文庫」のものであり,もう一つは「近代デジタルライブラリー」のものである。通常この二つの結果を得るには,各々のサイトを訪れて別々に探す必要がある。しかし,統合検索では,このような手間をかけずに,一つの検索窓から複数のデジタルアーカイブシステムのメタデータを一度に検索し,結果を一覧表示する。 この検索結果一覧表示におけるタイトル部分のリンクからは,詳細情報表示画面へ移動するようになっている。ここでは「近代デジタルライブラリー」を例に見ることにする(図3参照)。 この画面で表示される情報は,デジタルアーカイブシステムからポータルが取得したメタデータで構成される。左側にはDublin Coreをベースにしたメタデータ要素が並ぶ。このうち「URL」は,デジタルアーカイブシステム(この場合「近代デジタルライブラリー」)での書誌情報画面へのリンクとなっている(図4参照)。 書誌情報画面には一次情報へのリンクがあり,利用者はこれを辿って一次情報を閲覧することができる(図5参照)。 このように,利用者はキーワードを入力し検索を行うところから,一次情報の閲覧までナビゲートされたことが分かる。「青空文庫」の場合もほぼ同様の画面遷移を経て,テキストファイル化された資料の本文を読むことができる(図6参照)。 キーワード検索には,辞書による検索支援機能がある。例えば,キーワード「コンピュータ」を入力すると,図7のような結果を得る。 統制語「コンピュータ」のデータが検索結果として得られ,そのシソーラスとして類義語,上位語,下位語,関連語が表示されている。利用者は表示された語群を検索のヒントとして得た上で,この中からより検索キーワードとして適切と思われる語を選択して再検索を行うことができる。 現在この辞書データには,当館の普通件名典拠,固有名件名典拠,著者名典拠を用いている。 #### (2) 統合検索(連想検索) 連想検索は,入力したキーワードから「連想」されるようなコンテンツを検索するものである。文章などの自然文から関連する資料を検索できるのがその特徴の一つである。 例えば,Wikipediaの「源義経」の冒頭部分の文章を連想検索の検索窓にコピー&ペーストして(図8参照)検索を行うと,義経に関連があると思われる資料が検索される(図9参照)。 #### (3) 統合検索(分類による検索) 分類による検索では,日本十進分類法(NDC)に従い階層的に整理されたカテゴリのリンクをたどることで,資料を検索する。 例えば,浮世絵に関連する資料を見たいとする。 NDCの最上位の分類が表示されている画面で,浮世絵に最も関連があると思われる「芸術」を選択すると「芸術」の下位分類が表示される(図10参照)。 この中で浮世絵に最も関連があると思われる「絵画. 書. 書道」を選択する。すると第3分類が表示され,そのうち「日本画」を選択すると,浮世絵を含む「日本画」に関連する資料が一覧表示される(図11参照)。 この結果一覧表示から浮世絵の画像等を閲覧するまでの画面遷移は,他の検索の場合と同様である。また,第2分類以降は,選択した分類に属するデータに対してキーワードによる絞込み検索を行うことができるようになっている。 #### (4) その他 この他,統合検索機能として「新着コンテンツ」「更新コンテンツ」「アクセスランキング」「キーワードランキング」がある。 また,利用者の情報入手全般を支援する機能を実験として提供している。RSS**注2****)**を利用し,「デジタルアーカイブ関連」をテーマに外部のブログ等を含む他サイトが配信する情報を集めて表示している。また,プロトタイプからのお知らせや更新情報,新着コンテンツ,更新コンテンツを一覧表示し,それを個々の利用者がRSSリーダで受け取って閲覧できるようにしている。 ### 4.2. 統合検索機能の実装と「共通仕様」 図12はプロトタイプの実装イメージ図である。 [![](https://www.notion.so/image/dropped_image-9.png)](https://www.notion.so/image/dropped_image-9.png) 上部の楕円は,検索対象又はその候補となる個々のデジタルアーカイブシステムを表している。 デジタルアーカイブシステムは,自身が保有するデジタル情報などを管理するためにそのメタデータを保有している。これらのメタデータを検索可能とするため,プロトタイプのサービスプロバイダでは,機械的に連携し,メタデータを事前に収集してメタデータデータベースに格納しておく方法(以下「ハーベスト」と呼ぶ。)又は利用者からの検索要求の都度にデジタルアーカイブシステムへ検索をかけて結果を受け取る方法(以下「横断検索」と呼ぶ。)のどちらかを採っている。 さらにポータルでは,ハーベストと複数の横断検索の結果を統合し表示している(図13参照)。これにより,利用者はデータの所在や検索方法の差異を意識することなく,一元的な結果の閲覧が可能となる。 現在,デジタルアーカイブシステムが保有するメタデータ要素は,各々のシステムに依存した定義により作成され,プロトコルも統一されていない状態である。ポータルでそのようなメタデータを統合的に扱うためには,個別に対応して他システムのメタデータ要素との差異を調整しなければならず,統合的に扱うことが難しいものとなっている。この問題は連携対象が増加するほど複雑になる。そこで,メタデータをハーベストもしくは横断検索するためのメタデータ要素,記述規則及び通信プロトコルの「共通仕様」を予め定めておくことが必要となる。各デジタルアーカイブシステム側でその仕様に沿ったインタフェースを実装してもらうことで,ポータルとしては連携対象をよりスムーズに拡大することができ,保有コンテンツが一層利活用されることになる。それによって個々のシステム間の連携も容易になり,また,各検索エンジンや各種ポータルがシステム内の情報を自由に検索でき,副次的に有用な連携が生まれることが期待される。(このような連携を行える機能を備えたデジタルアーカイブシステムを「データプロバイダ」と呼ぶことにする。) プロトタイプ構築にあたっては,暫定的ながら「共通仕様」の案を定めた。今後は,他機関と調整を行いながら,案を確定し,普及していく予定である。 #### (1) 「共通仕様」(メタデータ要素) データプロバイダとポータルとのデータ交換に使用するメタデータ要素は,最低限Dublin Coreに定義されたものは可能としている。Dublin Coreは業種を超えてある程度普及しているという利点があるが,検索やその他実現したい機能のために必要と思われるメタデータ要素が定義されていない場合があった。そこでプロトタイプでは,Dublin Coreにいくつか必要と思われる要素や独自の限定子を追加して,「共通仕様」の案に取り入れている。 #### (2) 「共通仕様」(通信プロトコル) プロトタイプでは,次の通信プロトコルに関しても実験を行った(図14参照)。 ・ハーベスト:OAI-PMH, SOAP, RSS ・横断検索:SRW, Z39.50 「共通仕様」では上記の他,RSSやその他ウェブサービスによる横断検索も想定した。 ### 4.3. プロトタイプでの検証結果 検証の結果,複数のコンテンツを一元的に検索し,利用者を一次情報までワンストップでナビゲートすることが可能であり,有用だと確認できた。ただし,プロトタイプの機能やサービスはまだ実用としては十分でない点もあると認識しており,検証結果として問題点も多数洗い出されている。例えば,次のような点である。 - 検索機能の面では,ハーベストと横断検索の結果のマージに問題があり結果の並べ替え等に問題が生じている。 - ハーベストしたメタデータの分かち書きに問題があり,入力されたキーワードから適切に検索できないケースがある。 - 横断検索の手法では,横断検索先の検索機能に依存するので,他と結果の取り出しに相違がでてしまう可能性がある。 - 適用技術の検証部分に特に注力したため,利用者にとって大切な,操作性やサイトの見た目等への配慮が欠けている。 以上は,検証結果のほんの一部であるが,本格システムの構築においてはこれらの成果を十分活かしていく所存である。 ## 5. Web2.0世代のポータルを目指して ポータルにおいて現在注目しているのは「Web2.0」と呼ばれる概念である。 Web2.0[[6.(2006年)Web2.0世代のデジタルアーカイブポータルの提供を目指して]]とは,このような名称の技術があるわけではなく,既存のウェブを「Web1.0」と総称し,これの対比として次世代のウェブに見られる特徴的な姿勢を示したものだと捉えることができる。Web2.0の性質を端的に表現する言葉として,次のようなものがあると言われている2)。 「ユーザの手で自由に分類」「リッチなユーザ経験」「ユーザ体験の蓄積をサービスに転化」「ロングテール」「ユーザ参加型開発」「ユーザ生成型コンテンツ」「知のオープンソース」「進歩的分散志向」 Web2.0で論じられる世界を(部分的に)実現する一形態として,既存サービスでは例えば,GoogleMap,Google Adsense, AmazonのユーザレビューやBlog, mixi, Wikipediaなどがよく言及されている。既存の技術も見直され,Ajax**注3****)**が注目されている。 Web2.0の概念は,利用者の利便性を向上させるものであり,ポータルでも積極的に取り入れていくべきであると考える。本章では,Web2.0の概念に適合する要素を取り入れる可能性への考察を交え,デジタルアーカイブポータルの今後の展望を紹介する。 ### 5.1. メタデータの取得 ポータルでのナビゲーションは,各デジタルアーカイブシステムが持っているメタデータを収集,もしくは,ポータル側から横断検索できるようにしていただくことにより実現する。前述した「共通仕様」に従った提供機能があるデータプロバイダの場合,ポータルは円滑にメタデータを取得することが可能である。 このような提供機能がないシステムの場合,ポータルを含む他システムからアクセスするため,「共通仕様」に準拠した仕組みを提供してもらう。実装を促すために,当館が汎用的な提供機能のソフトウェアを開発して配布し,それを他システムに適用してもらうことも一法として考えている。 ### 5.2. RSSの活用 RSSはWeb2.0の「ユーザ生成型コンテンツ」の促進や「進歩的分散志向」を実現する技術といえるだろう。ウェブログ(Blog)におけるRSSを用いた更新情報の自動作成・配信機能,また,配信されたRSSデータの「RSSリーダ」を用いた受信はよく見られる。 またRSSはデータ構造が単純でありかつ拡張性があるという特徴を持つ**注****4)**。この適用容易性ゆえに,ポータルではRSSの可能性に注目している。 ポータルのメタデータ収集場面での適用を考えると,他のサイトから配信されたRSSデータをサイト側の改修負担をかけることなく収集し,統合検索対象のコンテンツとして用いることもできるだろう。また,通信するデータフォーマットにRSS2.0を用いた検索「OpenSearch」3)を用いることも考えられる。これにより,一層RSS配信元のコンテンツが活用されることが期待できる。 ### 5.3. ソーシャルブックマーク Web2.0の考え方では,利用者がコンテンツ作成に「参加」したり,「ユーザ体験の蓄積をサービスに転化」し他の利用者が利用可能としたりすることが行われている。 ポータルでは,データプロバイダ及びポータルでのメタデータ作成機能の一つとして,利用者が興味を持ったコンテンツやサイトをブックマークする機能を想定している。ブックマーク登録時に該当コンテンツのメタデータを取り出してデータベースに蓄積するが,その際利用者はフリーキーワードを含めたタグ(カテゴリ)を付与可能としておく。利用者が推薦したサイトを検索対象とし,さらに利用者の手で付与したカテゴリを用いた検索を行うことで,利用者の知識と体験を取り込むことができる。 ### 5.4. 辞書の活用 プロトタイプでは,当館の典拠データを辞書として用いたが,他の有用な辞書データを追加して共に検索可能とすることで,より幅広い支援を実現したいと考えている。辞書として有用なデータを蓄積したサーバ機能を用意し,外部システムと辞書検索のウェブサービスで連携することも想定している。例えば,WikipediaなどはWeb2.0の「ユーザ参加」により編集された,評価の高い「知のオープンソース」の一つの実現形態であり,このような辞書を取り入れることも考えられる。 辞書はそれ自体の検索サービスのみならず,プロトタイプの辞書による検索支援と同様の機能の実現やメタデータの自動付与及び統制等の様々な場面において活用が可能である。さらに,OWL(Web Ontology Language)を用いて辞書データを記述するなど,セマンティックWeb技術を活用すれば,機械的に意味解析可能となり,さらに活用の幅が広がると考えられる。 ### 5.5. メタデータの自動生成,組織化,保存 ポータルで扱うメタデータは,先に示した「共通仕様」におけるメタデータ記述要素を用いることを基本としている。しかし,一般の組織では,図書館のように統制された書誌を作成することは難しいだろう。そもそも,多くのデジタルコンテンツに手作業できちんとしたメタデータを付与することは困難である。 メタデータ収集時や検索インデクス作成時には,辞書の活用や日本語構文解析技術等を活用して,他のメタデータ要素の値や一次情報のデータを解析し,メタデータ要素を推測して可能な限り機械的に付与することが考えられる。ただし,期待される精度が得られない場合のため,人手による一部要素の入力や,自動作成した結果の修正等(メタデータの半自動生成)を取ることを考慮する必要がある。 ### 5.6. メタデータ提供とインタフェース ポータルがサービスを提供する際,そのインタフェースは大きく二つに分けられる。利用者に対するGUI(Graphical User Interface),システム間連携のためのAPI(Application Program Interface)である。 GUIについては,従来のLook&Feelに優れたレイアウト・デザインの考慮は勿論だが,Web2.0に基づく「リッチなユーザ経験」を実現するために,利用者は特段の説明がなくとも直感的な操作が行えるGUIを備えていることが望まれる。Ajaxを用いることで,マウスポインタを当てた部分のヘルプを半透過表示したり,統合検索における結果表示において,特定のメタデータ情報の展開表示をしたりすることが可能となる。また,利用者自身により,表示するブロックを選択可能としたり,表示ブロックの配置をマウスのドラッグ操作により動かすなど,利用者毎に使い勝手の良いポータル画面を容易にカスタマイズできるパーソナライズ機能が実現可能だと考える。 統合検索機能においては,収集したメタデータに対して辞書を活用することで,入力キーワードの推定表示等が可能と思われる。また,パーソナライズ機能として,利用者の志向に応じて検索対象を自動的に絞り込む機能を備えることも考えられる。 ### 5.7. ウェブサービスによる連携 Web2.0の「進歩的分散志向」に従うと,今後はそれぞれのデジタルアーカイブシステムが,ウェブ上で他システムからサービスとして利用可能な形での連携に対応が求められる。このようなウェブサービスによる連携機能が提供されると,コンテンツの検索サービス,閲覧サービス,貸出・複写申込みサービス,Amazonのように注文サービス等を自由に利用したサービスを提供することが可能になる。 ポータルでは,利用者がGUIを通じてメタデータ検索を行う機能だけでなく,統合検索などの各提供サービスについて,ウェブサービスのAPIとして提供することが好ましいと考えている。国等の公共機関に関しても,同様のサービスの提供を期待したい。例えば,公共図書館が「情報ハブ」として各地域のデジタルコンテンツ等を集約する枠組みが報告されているが,この集約した情報を提供するウェブサービスを提供する,すなわち蔵書目録検索サービス,複写申込みサービス等を独立したウェブサービス機能として構築しAPIを公開すれば,その情報が広く利活用されることになる。 各種ポータルサイト間でもシステム的に連携して相互補完しあい,全体で相乗効果を発揮できるようになることが望ましいと考える。 ### 5.8. Blog, wiki ポータルの説明文書や開発運用等の最新情報は,BlogやWikiを用いて編集し,利用者からもコメント付与や編集を可能とすることが考えられる。Web2.0の「ユーザ生成コンテンツ」やCGM(Consumer Generated Media)を実現する一つの方法である。Wikiはプロトタイプでも導入したが,Wikipediaのように,知識豊富な(不特定な)利用者の力を借りることで想像以上に優れた文書が完成することもあると考えられる。 ### 5.9. システム基盤 ポータルでは,多くの利用者及びシステムからアクセスがあると想定される。また,ポータルでの各種サービスに必要なデータは増加していくと予想できる。そこで,これらを考慮したシステム基盤の構築が不可欠である。 現在主流のアーキテクチャとして,システムをサービス単位で構築し,サービス間は疎結合な関係とするSOA (Service Oriented Architecture)が提案されている。SOAはサービスの改修の影響が他のサービスに及びにくい。また,グリッドコンピューティング技術を適用し,スケーラビリティ(拡張性)に富むシステムを構築することが可能である。 ポータルでもこのような技術を適用し,改修の負担の最小化,システム管理の省力化を図る想定である。 ## 6. 終わりに インターネット上にある膨大な情報は,「意味ある情報資源」として活用するための技術開発を進めるとともに,情報の提供者はその技術を適用し提供することにより,巨大な知識ベースとなっていく。デジタル化されていく情報を日本の文化遺産として後世に残し,新たな知識を創出するための知識として現在及び将来にわたって活用できるようにするため,データ提供者,サービス提供者各々の機関が互いにインセンティブをもち,相互補完しあいながら発展していけることが重要である。当館は国のデジタルアーカイブポータルを構築し提供することにより,各機関のデジタルアーカイブが,他システムからの利用を意識したサービス構築のための仕組みを実装することの普及促進の役割を果たしたいと考えている。 利用者の日常の情報探索行動を支援するサービスとして,利用者のニーズに応えられる国のポータルを構築するためには,関係機関が持つコンテンツ,ウェブ上で提供しているサービス,および今後普及が見込まれる次世代ウェブに関連した有用な技術を活用させてもらうことが重要であり,関係機関と協力して実現していきたい。 注1)プロトタイプのURL: http://www.dap.ndl.go.jp/home/ 注2) RDF Site Summary 又は Really Simple Syndicationの略。ウェブの見出しや要約を構造化して記述するフォーマットで,ニュースサイトやBlog等の更新情報の配信の用途によく用いられている。 注3) Asynchronous JavaScript + XMLの略。サーバと非同期に通信を行うことで,操作の結果をリロードすることなく随時に取得可能とする。これにより,サーバを意識しないスムーズな操作性が実現する。 注4) RSSの活用可能性を論じたものとして,次の文献がある。 林賢紀, 宮坂和孝「RSS(RDF Site Summary)を活用した新たな図書館サービスの展開」,情報管理Vol.49, No.1, April 2006. 1) Tim O'Reilly, What Is Web 2.0. (online), available from <http://www.oreillynet.com/pub/a/oreilly/tim/news/2005/09/30/what-is-web-20.html>, (accessed 2006-07-07). 2) 近江商人 JINBLOG. Web2.0 とは -7つの分類と要素MAP. (オンライン), 入手先<http://ceonews.jp/archives/2005/10/web20_7map.html>, (参照 2006-07-07). 3) OpenSearch. (online), available from <http://opensearch.a9.com/>, (accessed 2006-07-07). 図1 プロトタイプのトップページ 図2 検索結果の一覧表示 図3 詳細情報表示画面 図4 URLのリンク先(近代デジタルライブラリー) 図5 近代デジタルライブラリーの本文 図6 青空文庫の本文 図7 辞書による検索支援の表示画面 図8 連想検索の検索窓 図9 連想検索の検索結果一覧 図10 分類(NDC)による検索 第2分類 図11 分類による検索の検索結果一覧 図12 平成17年度プロトタイプの実装イメージ 図13 統合検索のイメージ図 図14 適用した通信プロトコルの概念