# 7.(2006年)国立国会図書館における電子図書館サービスのゆくえ
図書館雑誌平成18年11月号原稿
## 目次
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## 1. はじめに
本稿では,電子図書館などに関する近年の国立国会図書館(以下「館」という。)の取組みについて、電子情報の保存と利用を中心に説明する。
最初に電子図書館事業の館における位置づけを明らかにしたい。館は,果たすべき使命・役割及び将来目指すべき方向性を明確にするため,平成16年に「国立国会図書館ビジョン2004」を定めた 。その中で次の3点を館の使命として挙げた。
・国民の知的活動の成果を,印刷物から電子情報にいたるまで広く収集し,国民共有の情報資源を構築する。
・国政課題に関する調査・分析及び情報の提供によって,国会の立法活動を補佐する。
・行政・司法各部門及び広く国民に対し図書館サービスを提供し,現在及び将来にわたり,情報資源へのアクセスを保障する。
つまり,電子情報を収集すること,当館資料を簡単に利用することができるようにすることは館の使命として位置づけられている。このビジョンを実現するため,4つの領域に重点を置いており,「デジタルアーカイブの構築」はそのひとつである。すなわち,「国民共有の情報資源として,電子情報を蓄積・提供するデジタルアーカイブを構築する」ことが目標である。同じく平成16年には「電子図書館中期計画2004」を定め,5年程度を目途として達成すべきことを示した 。
以下においては,資料のデジタル化と電子展示会,パッケージ系の収集・保存・提供,ネットワーク系の収集・保存・提供,デジタルアーカイブポータルの順で説明する。
## 2. 資料のデジタル化と電子展示会の提供
館は,所蔵する資料のデジタル化を行ってきた。この結果,インターネットにつながっていれば,世界中どこからでも「近代デジタルライブラリ」によって明治期刊行図書約13万冊を閲覧することができるようになった 。提供開始以来の画像表示件数は800万件を超えている。著作権保護期間終了が不明の図書については文化庁長官裁定に基づき提供を行った。現在は,明治期に続いて大正期図書(約9万冊)のデジタル化の準備を行っているところである。
このほか,館は「児童書デジタルライブラリ」,「貴重書画像データベース」,「国会会議録」,「帝国議会会議録」をインターネット上で提供している。これらはレファレンスのツールとしても利用することができるであろう。また,これまでのデジタル化の経験を踏まえ,『資料デジタル化の手引き』を作成し,提供しているので,参考にしていただければと思う 。
また,平成10年の「デジタル貴重書展」以来,館は電子展示会を提供してきた。現在,「日本国憲法の誕生」,「史料にみる日本の近代」など9点を提供している。電子展示会は,館ホームページの中でも注目度の高いコンテンツであり,平成17年度末の時点で,それまでに提供されたコンテンツを累計して約1742万ページのアクセスがあった 。今後とも電子展示会を追加していく。
## 3. パッケージ系の収集・保存・提供
電子出版物は大別してパッケージ系とネットワーク系に区別することができる。パッケージ系とは,CD-ROMやDVDのように有体物に固定された電子出版物のことである 。
館は,図書や雑誌などの図書館資料を国立国会図書館法の規定に基づき,できるだけ網羅的に収集してきたが ,パッケージ系の収集については,納本制度調査会の調査審議を経て,平成12年度に国立国会図書館法の改正が行われ,納本制度に組み入れられた。これにより,館は,図書や雑誌と同様に,パッケージ系の収集を開始した。収集されたパッケージ系は日本全国書誌やNDL- OPACにも掲載されており,また東京本館電子資料室において閲覧・利用することができる(ゲームやアプリケーションを除く。)。
課題は,こうして収集したパッケージ系を将来も利用することができるかどうかにある。例えば8インチのフロッピーディスクが保存されていたとしても,これを再生する装置はどこにでもあるわけではない。また,コンテンツを利用するのに必要なオペレーティングシステムなどのソフトウェアも絶えずバージョンアップがなされており,必ずしも完全に互換性があるとは限らない。こうした課題に対する対策としては,電子情報を他の媒体へ移行すること(マイグレーション)や昔の環境を擬似的に再現すること(エミュレーション)が考えられる。
館は平成15年度・平成16年度にかけて,パッケージ系の長期的保存とアクセス手段の確保をテーマに,委託調査を行った。これによれば,サンプル調査したパッケージ系(200点)の約7 割(138点)に利用上の問題があることが明らかになった。また,異種媒体への移行としてのマイグレーションは容易に実施できること,しかしエミュレーションやファイル形式の変換としてのマイグレーションは現時点では有効な技術的な解決手段とは言いがたいことが判明した 。
## 4. ネットワーク系の収集・保存・提供
パッケージ系と異なり,ウェブ上の情報や電子ジャーナルといったネットワーク系は,納本制度に基づく収集対象に含まれていない。しかし,インターネット上の情報は1年で4割が消滅するといわれている。また,当館に納本されていた雑誌のうち,紙媒体での刊行をやめ,ウェブ上での提供に切り替えられたものが既に約250タイトル程度存在する。こうした事情を踏まえて,館は平成14年以来,「インターネット資源選択的蓄積実験事業」(WARP)によってウェブ情報の選択的な収集を行ってきたほか,技術的に収集が難しいデータベースについては「国立国会図書館データベース・ナビゲーション・サービス」(Dnavi)によってリンクしてきた 。
WARPでは,電子雑誌のほか,国の機関・都道府県,合併前の市町村,独立行政法人化前の政府関係機関,国立大学法人化前の国立大学,イベントのウェブサイトなどを収集対象とし,個別に許諾を得ながら,ロボットを用いて収集を行った。平成17年度末の収集コンテンツ累計は電子雑誌1490タイトル,ウェブサイト1898タイトルであり,収集した情報量は合わせて約3.1テラバイトに達する。平成18年からは全文検索機能を追加し,実験事業から本格事業へと移行した。
Dnaviは,インターネット上にあるデータベースへリンクして案内するサービスである。自治体が公開しているデータベース,独立行政法人及び特殊法人が公開しているデータベース,大学・学術機関が公開しているデータベース,貴重書・特別コレクションの一次情報・二次情報データベースを優先して収載した。平成17年度末時点での収載件数は9134件である。
しかし,既に述べたとおりネットワーク系は現時点では納本制度に含まれていないため,WARPは個別に発信者の許諾を得て収集を行っているが,この方法では収集可能な情報量が限定される。今後はネットワーク系を広く収集することを目指して法制度化を行いたいと考えている。
また,電子ジャーナルや電子学位論文など,ウェブ情報とは異質の情報を収集・保存するために,WARPとは別にデジタル・デポジットというシステムの開発に着手している。平成21年度にはこのデジタル・デポジット・システムも含め,デジタルアーカイブのシステムが整う予定である。
## 5. デジタルアーカイブポータルの開発
電子情報を収集・保存するだけでは電子図書館事業として十分とはいえない。館のホームページにアクセスする利用者は,館に関心があるわけではなく,探している情報が館のページにありはしないかと期待してアクセスしていると考えられる。利用者のニーズを満たすためには,あちこちにある情報を統合して利用者に提供することが求められているといえる。
現在,館の各データベースサービスを利用するに際しては,個別の検索画面を用いる必要がある。このようにバラバラに案内していた館の情報を統合して提供するだけでなく,さらには館外のデジタルアーカイブの情報をも統合して提供することを目指して,デジタルアーカイブ・ポータル・サイトを構築することを企てている。このポータルでは,利用者による検索の結果が電子媒体であればただちに閲覧可能とし,紙媒体の場合には,例えば複写サービスへと誘導する。本格システム構築に先立って,プロトタイプシステムを構築しており,技術を検証する目的で試験的に提供中である 。ここでは,国立公文書館や岡山県立図書館と連携しており,近代デジタルライブラリ,NDL-OPACなどとともに,国立公文書館デジタルアーカイブやデジタル岡山大百科をも検索し,それらの一次・二次情報にジャンプする。
館がこのような仕組みを構築することは,館の利用者にとってだけでなく,他の図書館にとっても有用であると考えている。それぞれの図書館がデジタルアーカイブを構築するときに,共通のメタデータ発信機能を装備さえすれば,館のデジタルアーカイブポータルから統合的に検索することができるようになるためである。
また,利用者は図書館にある知識だけを求めているわけではないであろう。このため,図書館の壁を超えて,検索の範囲を公文書館,民間データベース,書店,古書店,博物館等へと広げたい。
## 6. おわりに
館では,今後も電子図書館事業を計画的に進めていく。Google世代に対してもアピールする真の電子図書館の実現は一館のみではありえない。ぜひ日本中の図書館の御協力を希望したい。